研究課題/領域番号 |
24700854
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 長崎国際大学 |
研究代表者 |
野嶽 勇一 長崎国際大学, 薬学部, 講師 (30332282)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 乳酸菌生産物質 / 脂質代謝 / 豆乳 / バイオジェニックス / 食生活 |
研究概要 |
我々は、豆乳を栄養源として得た新規乳酸菌生産物質PS-B1に、予備的実験レベルではあるが脂質代謝改善作用があることを明らかにしてきた。本年度においては、PS-B1が示す本生理活性について、①生理作用の再現性の十分な確認、及び②分子レベルでの作用機序の解明、の両面から研究を進めた。①および②の実験から数多くの知見を得るべく、実験動物を用いたPS-B1摂取実験を精力的に実施した。 まず、高炭水化物飼料または高脂肪飼料をマウスに摂取させて肥満を誘導させた。この食餌誘導性肥満モデルマウスを、①引き続き同飼料を摂取させる群、②3%PS-B1含有同飼料を摂取させる群、③5%PS-B1含有同飼料を摂取させる群、の3群に分けて飼育し、最終的に全血を回収した。飼育期間中はマウスの体重と食餌量を測定し、飼育終了後には内臓脂肪(精巣上体付属脂肪および腸管付属脂肪)重量も測定した。また、得られた血清を臨床検査kitに供し、脂質代謝パラメーター等(総コレステロール値、LDLコレステロール値、HDLコレステロール値、中性脂肪値、インスリン値、血糖値)を測定した。各群間の差異を検討し、PS-B1の摂取によってもたらされる保健効果の特長を検証した上で、肥満状態に対するPS-B1の改善効果を評価した。さらに、マウスに食餌性の肥満を誘導する過程において、マウスにPS-B1を予め摂取させた群を設けた。同様の臨床検査解析により、肥満状態に対するPS-B1の予防効果についても評価した。 これらの動物実験より得られたマウスの臓器を用いて、ChREBPをはじめとする脂質代謝関連因子の発現量に及ぼすPS-B1の影響について解析し、表現型との相関の合致を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PS-B1が示す生理活性(脂質代謝改善作用)の特性に対する理解が、実施した実験の段階を踏んで徐々に深まってきたと考えている。PS-B1が示す本生理活性についての研究は、予備的実験から得られた情報レベルからの開始であったが、年度中に実施した実験動物を用いたPS-B1の摂取実験を中心に十分な再現性を得ることができた。 また、PS-B1が示す本生理活性が発現するに至る作用機序については未だ十分な取り組みに至っていないが、PS-B1摂取動物より数多くの試料を収集することに成功しており、細胞内情報伝達や細胞内低分子化合物の関与の観点から一定レベルの解明が図られるように詳細な解析を行う予定である。 その一方で、研究立案当初から予想していたように、有用作用の本質となる生理活性物質の精製・同定については、解析途中のために未だ十分な研究成果を得るに至っていない。研究の継続により、本課題の達成を要する。
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今後の研究の推進方策 |
PS-B1が示す本生理活性が発現するに至る作用機序の解明、およびその生理活性の本質となる生理活性物質の精製・同定については、未だ十分な研究成果を得るに至っていない。今後、これまでに蓄積した知見を基に、PS-B1に含まれる生理活性物質の探索研究に精力的に取り組む。 さらに、精製・同定に至った生理活性物質を利用した各種生化学的、分子生物学的、および薬理学的解析から、多面的かつ包括的な作用機序の解明を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画発案時の予定通り、PS-B1の脂質代謝改善作用について十分な再現性を得ることができた。よって、今後はその生理作用の発現メカニズムの解明に関する実験を中心に実施していく予定である。 そのため、メカニズム解析に必要とされる各種kitや試薬などの消耗品に多くの予算を充てる。また、得られた研究成果についての学会発表や情報収集のための費用を計上する。 人件費については、計上の予定はない。
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