Lactobacillus属を中心とした16種のヒト常在乳酸菌を用いた独自の複合培養法を開発し、この手法によって調製した「豆乳の新規乳酸菌発酵ろ液PS-B1」が示す脂質代謝改善作用を解析している。今年度は脂質代謝に及ぼすPS-B1の影響を遺伝子レベルで明らかにし、作用機序の全貌の理解を図ることを研究の主たる目的とした。 まず、4週齢の雄性C57BL/6Jマウスに高スクロース飼料を与え、肥満を誘導した。飼育開始8週間後に高スクロース飼料中にPS-B1を混合してマウスに摂取させた場合に、PS-B1含有量に比例して体重増加が抑制される傾向が見出された。次いで、12週間飼育した後にマウスを剖解し、肝臓から抽出したtotal RNAからcDNAを調製した。このcDNAを対象として、DNAマイクロアレイ解析実験を実施した。 遺伝子や代謝経路に関するデータベースを参照として得られた実験結果を解析した結果、PS-B1の摂取によって39遺伝子に発現量の変動が検出された。これらの39遺伝子は生体内の69経路の代謝に関与していることも明らかとなり、PS-B1が広く影響を及ぼしていることが示唆された。また、一つの連続した代謝経路上で複数の遺伝子の発現量が変動していたものが14経路(20遺伝子が該当)あったことから、PS-B1が脂質代謝改善作用を示す上での重要な作用点となっていることが考えられた。今後の特許出願との兼ね合いのため上記結果の詳細を示すことは避けるが、前年度までに得ていた「FAS、ACC1、ACC2、L-PK、SREBP-1c等の発現がPS-B1によって抑制された」という定量PCRによる実験結果とよく合致していた。
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