研究課題/領域番号 |
24700859
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
奥田 徹哉 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 主任研究員 (20443179)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | O-GlcNAc / ob/obマウス / 高血糖 / 糖尿病 / 栄養指標 / バイオマーカー |
研究概要 |
糖尿病発症に関わるN-アセチルグルコサミン付加(O-GlcNAc化)ならびにその蓄積と、高血糖が惹起する耐糖能低下や代謝異常などの慢性的な組織病変とが、どのように相関するのかを明らかにするため、食餌により血糖値を慢性的に高低にコントロールしたモデルマウスを用いて、体内におけるO-GlcNAc 化タンパク質の発現動態の解析を進めた。本年度は、確立したモデルマウスの肝臓において、その発現量が血糖値の変化に応じて変動するO-GlcNAc化タンパク質についてその実体同定を試みた。検討の結果、インスリンシグナル経路の細胞内メディエーターであるAktプロテインキナーゼタンパク質が、高血糖下の肝臓にてO-GlcNAc化される基質タンパク質の一つであることを見いだした。更には、このAktのO-GlcNAc化が高血糖下の肝臓において増強していることを見いだし、一方で高血糖表現型を持続的に改善したマウス肝臓では、AktのO-GlcNAc化レベルが低下することを見いだした。AktのO-GlcNAc化は、Aktが活性化する際に起こるリン酸化修飾に影響を及ぼすことが細胞レベルでの研究にて明らかにされていたため、このAktのリン酸化修飾について解析したところ、生体内においてもO-GlcNAc化の増強にともないAktのリン酸化修飾量が低下していることが確認された。この成果は、糖尿病の病態(インスリン抵抗性)の発症メカニズム解明に資する知見であり、また今回見いだしたO-GlcNAc化Aktが、最終目標とする糖尿病の改善効果を評価する指標物質として有用であることを示す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
目標とした指標物質の候補となるO-GlcNAc化タンパク質の実体同定について検討し、Aktプロテインキナーゼタンパク質の同定に成功した。更には、当初の計画以上の成果として、慢性的な高血糖によるAktの過剰なO-GlcNAc化が、インスリン抵抗性の分子病態に関与していることを示す知見を得た。また一方で、血糖値の変動にともないその発現量が大きく変動するタンパク質の同定にも成功し、今年度中に誌上発表を達成した。(Okuda T, et al. Nutr. Diabetes. 2, e50)
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今後の研究の推進方策 |
今年度中に見いだしたO-GlcNAc化Aktタンパク質を、目標とする指標物質として活用するために必要な検討を実施する。具体的には、O-GlcNAc化Aktの定量的な評価に必要な手法の確立やツール開発について進める。一方で、さらなる指標候補物質の探索についても検討し、最終目的に適うより実用的な指標物質の開発を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の目標とした指標候補物質の同定について、O-GlcNAc化Aktタンパク質の同定に早期に成功したため、今年度中はその解析を重点的に進めたが、他にも有用な候補タンパク質を新たに見いだしており、その同定に必要な検討を引き続き次年度も実施する。次年度使用予定の研究費はその実施に必要な研究費として使用する。翌年度以降に請求する研究費は、同定に成功した指標候補タンパク質の定量的な評価に関する検討に使用する。
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