最終年度は、(1)ケトダイエット(KD)による脂肪肝改善効果の詳細な解析と、(2)本効果の解析手法確立および更なる評価指標候補の探索について検討した。 (1)我々は過食により肥満化し、高血糖や肝腫大を伴う脂肪肝を発症するミュータントマウス(ob/obマウス)に低炭水化物食かつ高脂肪食であるKDを持続的に摂取させると、肥満は進行するが脂肪肝が著しく改善することを見出している。一方、他グループによる過去の研究結果では野生型マウスにKDを持続的に摂取させると、脂肪肝の形成が進行すると報告がなされていた。このKDの相反する効果について我々の実験条件下にて再評価したところ、野生型では確かにKD摂取による脂肪肝形成が確認され、一方でob/obマウスでは改善することが再確認された。詳細な解析により、高脂肪食であるKDは健常なマウスに摂取させた場合、ある程度の脂肪肝形成を誘発するが、ob/obマウスに見られるような過食によって誘発される脂質生合成を伴う脂肪肝形成については効果的に抑制する作用を有することを明らかにした。 (2)食餌による脂肪肝の改善とシンクロして発現量が変化する生体分子として、O-GlcNAc化された細胞内タンパク質(Aktキナーゼ)を同定したが、細胞内タンパク質では指標として活用する際に問題があるため、更なる有用な指標候補を探索した。昨年度中にシアリル化糖鎖を含有する生体分子に指標候補としての有用性を見出していたため解析したところ、意外なことに肝臓に発現するスフィンゴ糖脂質糖鎖として存在するシアリル化糖鎖が大きく変化していることを新たに発見した。詳細な解析により、KD摂取や満腹中枢刺激ホルモンであるレプチンがこの発現変化に影響することを明らかにした。これらの糖鎖変化を評価するため抗体を開発し、関連特許を2件出願(PCT)した。
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