研究実績の概要 |
本研究は、基礎的研究で加齢に影響を及ぼす物質として注目を浴びている抗酸化ビタミンの1つであるビタミンCに注目した。高齢者の血中ビタミンC濃度と身体・運動機能との関連を調べた横断研究では、血漿ビタミンC濃度と運動機能(特に握力および開眼片足)との間に有意な正相関がみられた(Saito K et al.J Gerontol A Biol Sic Med Sci,2011)。しかしビタミンCの生体内のメカニズムは、まだ不明な点も多い。近年、抗酸化能を有するビタミンCが、筋肉の増強、運動機能の低下に予防的に作用することが示唆されている。本研究では2006年に行われたお達者健診をベースラインとし、2013年に追跡調査を行い、ベースライン時の血中ビタミンC濃度と運動機能の経年的変化との関連を明らかにすることを目的とした。東京都某地区在住の70-84歳の女性を住民台帳から抽出し、2006年11月(ベースライン時)に介護予防を目的とした健診(お達者健診)を実施し、2013年に追跡調査を行った。ベースライン時の健診受診者は957名であった。この内、2013年の健診を受診した591名で、ベースライン時に血中ビタミンC濃度を計測している者を解析対象とした。対象者の年齢は77.7±3.2歳(平均±標準偏差)、血中ビタミンC濃度(Vit.c)は、9.13,1.60μg/mL(幾何平均,幾何標準偏差)、ビタミンCサプリメント摂取者は25.2%(149名)であった。ベースライン時のVit.C濃度と7年後の運動機能を比較すると握力はベースライン時に比べ追跡時の方が有意に強く(p<0.0001)、通常歩行速度(p<0.0001)、最大歩行速度(p<0.0001)は追跡時の方がベースライン時より有意に短くなっていた。ベースライン時のVit.C濃度と追跡期間中の運動機能との変化との相関関係をみると、最大歩行速度に負の相関関係が認められた。ベースライン時の血中Vit.C濃度と7年間の運動機能の変化量との関連をみると、通常歩行速度、最大歩行速度が有意に早くなっていた。
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