研究概要 |
本研究においては, 聞き取り調査の結果を踏まえて選出した4つのFCIの設問について質問紙調査を実施し, FCIの妥当性を定量的に評価した。調査においては, 各設問の妥当性を評価するために必要な思考過程の単位まで設問を細分化した設問群(以下,「部分設問群」)を独自に開発した。 初年度は2つのFCIの設問について, 2大学の学生111名を対象に調査を実施した。解析として, 既習者の偽正答率と未習者の偽正答率の差を仮説検定した結果, それら2つのFCIの設問に不備があることが95%の確実さで言えることが明らかになった。最終年度には, 初年度の結果の確証を得るため, 当初の2問を含む4つのFCIの設問について, 4大学の学生524名を対象に調査を実施した。その結果, 当初の2問について不備があることが確証された。この結果は, 被験者がそれらの設問で問われている物理概念を理解していなくても, それらの設問に正答できることを意味している。 ここで我々は, 設問の不備を定量化し, 系統誤差として表現することによって, 不備のあるFCIの設問を修正することなく使用し続けられる可能性があることに気がついた。このアイデアに基づいて, 最終年度の調査データを用いて解析を行ったところ, 不備のあるFCIの設問は不備のない設問の4~7倍程度の値の系統誤差をもつこと, および, その系統誤差の値は統計誤差の値と同程度の大きさであることが明らかになった。この結果が, ゲイン等に与える影響の評価については, 今後の研究課題として取り組む予定である。 本研究の中間成果報告としての論文は, Phys. Rev. ST -PER誌から出版した。同誌は物理教育研究分野において, 2012年で最もImpact Factorが高く, また同誌から出版された日本人の論文は極めて少ないことからも, 本研究成果には大きな意義があるものと考えられる。
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