研究課題/領域番号 |
24700876
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
橋本 浩二 福岡大学, 工学部, 助教 (40412572)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | プロジェクト型学習 / ハードウェアPBL / イメージセンサ制御 / FPGA設計 / ライントレーサー |
研究概要 |
本研究では,ディジタル・ハードウェア領域の開発あるいは組込みシステムのソフトウェアとハードウェアの協調型技術開発設計を主体とし,かつ研究開発テーマの業務請負的な要素を含むPBL演習テーマを構築し,その教育効果を検証する.平成24年度は「研究開発テーマの業務請負的な要素を含む,ディジタル・ハードウェア領域の技術開発・設計を行うPBL演習テーマの基本検討および詳細検討」と,そのテーマの「実施前評価,成果見積もり」ならびに「実施」と「実施後評価」に取り組んだ.本PBLは計算機工学を研究領域とする4名の修士1年次生を対象とした.4月から8月までの前期において「実施前評価,成果見積もり」を行いつつ,Webソフトウェア開発のテーマを題材とするミニPBLを実施し,一般的な情報システム開発工程モデルを理解させ,また作業経験を培った.そして9月から翌年1月までの後期において,本研究に基づくPBLを「実施」した.そして2月から3月にかけて「実施後評価」を行った.本PBLは「画像認識型ライントレーサ」の開発を題材として設定し実施された.具体的には,イメージセンサが取得した動画像中の白線を検出してトレース走行する,およそB4判サイズの走行体を開発するというテーマである.このPBLはソフトウェアとハードウェアの両方を研究開発するプロジェクトであるが,特にイメージセンサの制御とFPGA上の画像処理ハードウェア回路の開発に注力しつつ,走行体を出来る限り安価な部品で構成させることを目標に,顧客と折衝しながら開発を進める,という従来のPBLには無い特徴を有する.そして本PBLに類似したテーマ構成の実施することで,特にディジタルハードウェアに関する広範囲にわたる知識・技術の集約と利活用力の向上および,マネジメント・意思疎通力の劇的向上といった教育効果を学生にもたらすことができる,という調査結果を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度のPBLは後期終了時点で,成果物の完成度という点ではいくらかの課題を有していた.しかし,課題の洗い出しおよび課題の解決策について学生は,自らの自己評価や対外発表を通じて明確化し,意識付けすることができたため,教育効果という点では問題となっていない.むしろPDCAサイクルを自ら回すことができる人材の育成,という見地では,今回のPBLのテーマのレベル設定はチャレンジングなものであり,適当であったと思われる.一方で技術的支援という点では走行体製作の使用部材選定と計測・電源機材の提供において,反省すべき点があった.
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今後の研究の推進方策 |
本年度に実施したPBL演習テーマの実施後評価を踏まえつつ,研究開発テーマの業務請負的な要素を含む,組込みシステムのソフトウェアとハードウェアの協調型技術開発・設計を行うPBL演習テーマを構築し、その実施後評価に取り組む.具体的には以下のとおりである. (1) PBL 演習テーマの基本検討.PBL 演習の外殻,教員および企業アドバイザ,技術アドバイザといった支援体制を検討する.なお本演習テーマは,2チーム構成となる可能性がある.(2) PBL 演習テーマの詳細検討.上記で検討した内容をもとに,演習テーマの詳細を検討する.本演習テーマは2チーム構成となる可能性があるが,それぞれのチームについて,演習課題と到達すべき研究成果の目標の詳細を検討する.また教育カリキュラムについても必要に応じて,講義・演習項目を追加する.開発工程のモデルについては,原則的にソフトウェア側はスパイラルモデル,ハードウェア側はウォーターフォールモデルとするため,相互の工程間調整について,あらかじめ十分に議論をしておく必要がある.以上,1.と2.を次年度前期(4月から8月)に行う.(3) 実施.上記PBL演習テーマを次年度後期(9月から1月)に実施する.(4) 実施後評価.PBL演習により得られた研究開発成果および人材育成効果について,第3 者を交えて細部まで評価する.評価結果は報告書として取りまとめる.(2月から3月) さらにこれまでの研究の総括を行い.研究報告をまとめる.研究報告には,PBL 演習のノウハウのほか,平成24年度,25年度双方においてPBL演習を受けた学生およびPBL演習チームに関係した教員・企業アドバイザに対してのアンケート結果を盛り込む.また研究報告書には,専攻および大学学部の教育カリキュラムの要修正・改善項目について盛り込むことを予定している.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究開発的課題をテーマとするPBLは,PBL対象となった学生自身,および指導にあたった教員(研究者)が対外発表することによって,実施後評価の内容は格段に正確なものとなり,またより高い教育効果が得られる.そのため,本年度の研究費には,学生の出張旅費が盛り込まれていた.ところがその出張旅費が想定以上に大きくなることが懸念され,急きょ,その対応策として,他研究機関の予算からの支出を依頼せざるを得なかった.また,PBLで使用する機材の購入金額が当初の予定より低かった.そこで繰り越し金額を次年度の研究費とし,PBLに取り組んだ学生および研究者がPBLの成果を対外発表するため,あるいは情報収集のための出張旅費とする.それによって,今年度の実施後評価の内容をさらに向上させ,また,次年度のPBL実施後評価を確実なものとしたい.
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