研究課題
現在の放射線教育に最も利用されている実験装置は霧箱であるが,霧箱は実験前にドライアイスの事前準備が必要である点や装置が不安定である等の欠点もある。そのため,教育現場で利用するには測定原理が単純かつ安定的に放射線の可視化が可能であり,また放射線の危険性が実感できるような装置が望ましい。そこで本研究では,可視化原理が安定しているプラスチック板を用いた可視化計測技術に注目した。平成24年度には,授業時間内での実験を考慮してプラスチック板のエッチング条件の検討を行ったところ1単位時間(50分)以内に顕微鏡で観測できる大きさのエッチピットを形成するには,95 ℃の30 % KOH水溶液で30~40分エッチングすれば十分であることがわかった。また,光学顕微鏡よりも安価な計測機器として小型のモバイル顕微鏡およびスキャナを提案し,十分に放射線計測が可能であることを確認した。毒物及び劇物取締法の規制対象外濃度である5 % KOH水溶液でエッチングを行ってもエッチピット直径は小さいが観測することは可能であることがわかった。平成25年度には,このプラスチック板を用いた放射線可視化計測方法の教育実践として小学・中学・高校生向けの出前授業および一般向けの公開講座を計8回行い,受講者217 人,アンケート回答者118 人を得た。このアンケートにより教育効果の検討を行った。霧箱には劣るがプラスチック板を用いた実験も受講者の興味を引くことができたことから,放射線への関心を高める教材として効果が期待できることがわかった。プラスチックを用いた実験は霧箱と同様に可視化を行うことができるので興味を引きやすかったのではないかと思われる。また,プラスチックは穴が開くという現象を観測することができるので放射線の危険性やエネルギー性に対する高い学習効果が期待できることがわかった。
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日本高専学会誌
巻: Vol. 18, No. 3 ページ: 53-56