研究課題/領域番号 |
24700883
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
今野 文子 東北大学, 高等教育開発推進センター, 助教 (20612013)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 授業リフレクション / 教師教育 / 授業改善 / 教授設計 / インストラクショナル・デザイン / ファカルティ・ディベロップメント / プロフェッショナル・ディベロップメント |
研究概要 |
(1)大学教員授業準備調査結果の分析 平成24年度には,これまでに提案してきた授業リフレクション手法を複数分野、複数教員を対象とした実授業に適用するための基礎的な調査として,東北大学の全教員を対象とした実態調査の分析を実施した。本調査では,授業の設計および日々の授業の準備として,実際の大学教員が活動として何に取組み,何を参照してどのくらいの時間で準備を行っているのかについて調査した。調査結果は現在論文投稿,国際会議での発表に向けてまとめており,平成25年度に発表する予定としている。 (2)リフレクションを埋め込んだプログラムの開発と実施 将来大学教員になることを目指している大学院生や初期キャリアの教員に対し,マイクロティーチングの実践とビデオ映像を利用したリフレクション,およびリフレクティブ・ジャーナルの執筆を通した継続的なリフレクションの取組みを実施してもらい,その過程を分析した。この結果については,タイで行われた国際会議ICEDにおいて発表した。加えて,研究協力関係にあるメルボルン大学高等教育研究センターのスタッフとの意見交換,ミーティングを5回にわたって実施し,実践方法に対するアドバイスを受けた。また,実証実験のためのデータ収集として,継続的に同一授業の撮影を実施し以降の年度における実験のデザインについて検討を行った。一方,リフレクションの要素を取り入れた授業設計に関する研究として,中国語教育を対象としたブレンデット・ラーニングの開発と実践に取組み,この成果を論文として発表した。同様に,実施した授業の結果をリフレクションし,後の授業計画の設計に反映するためのシステムの開発に取組み,研究会等において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は,他の研究プロジェクトの遂行と合わせて,海外出張時に複数回にわたり研究協力者との意見交換ができたため,この点においては計画以上の進展があった。また,実施した授業の結果をリフレクションし,後の授業計画の設計に反映するためのシステムについても,プロトタイプシステムの実装を完了することができた。 国内での実践については,必ずしも当初の予定にはなかった初期キャリアと大学院生を対象とした取り組みについては計画以上の進展があったが,中堅以上の教員の実授業を対象とした取り組みについては,データ収集を中心に実施したため,実証実験そのものの準備段階にとどまったといえる。 上記を総合すると,若干計画から遅れている部分があるものの,計画以上の進展があった部分がそれを上回っているため,概ね順調に進展していると評価することができる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度以降は,職務として実践している初期キャリアおよび大学院生を対象とした教育スキルのトレーニングプログラムの開発と関連させて,実証実験の機会を確保することを計画している。 また,平成24年度に収集したデータに基づき,継続的に実践の参与観察を行っている授業に対し,実証実験を実行に移す予定である。加えて,基礎調査の結果を踏まえ必要な追加調査やインタビューを実施し,実現場における授業計画の立案、作成の実態、課題、ニーズのそれぞれを明らかにすることとしている。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1)授業リフレクション手法の設計内容の再定義とこれによる実証実験の実施:平成24年度の研究成果に基づいて拡張、汎用化したリフレクション手法を再度実授業に適用し、その実施結果をもとに、本手法による計画の改善、高度化への効果を分析する。また、ここで明らかにした課題を解決するため、提案手法の設計内容を見直し、再定義する。なお,本研究における実証実験の実施に当たっては、対象者に対し同意書を作成し、調査内容や目的について十分に説明を行う。したがって,このための実験データ保存メディア等の購入を必要とする。 (2)授業リフレクションプログラムの設計:(1)で明らかにした授業リフレクション手法に基づき,支援者,教員それぞれによる取組みの内容,手順のそれぞれの明確化を図り,本研究で提案する授業リフレクションプログラムの設計,およびそのための手続きを明らかにする。また,SITE等の国際会議において関連研究の調査を行うとともに,研究成果を国内外の学会(日本教育工学会、教育システム情報学会,大学教育学会,ISSOTL等を予定)にて報告する。したがってそのための旅費を必要とする。 なお,次年度使用額は,本務の出張と合わせて研究打合せを実施できたためによって生じた旅費に相当する残額であり,次年度以降に予定している調査旅費,研究発表旅費として使用する予定である。
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