研究課題/領域番号 |
24700885
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 筑波技術大学 |
研究代表者 |
若月 大輔 筑波技術大学, 産業技術学部, 准教授 (50361887)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 遠隔情報保障 / 無線ネットワーク / 文字通訳 / 手話通訳 / 聴覚障害者 |
研究概要 |
高等教育を受ける聴覚障害者を支援するために,遠隔から手話・文字通訳を提供できる遠隔情報保障システムの研究開発を行ってきたが,情報保障の実施にあたり現地ごとに異なるネットワーク構成への対応や,システム構築,運用にかかる機材やスタッフのコストが課題となってきた.本研究ではこれらの課題を解決するために,無線ネットワークを用いた遠隔情報保障について検討する.最適な音声や映像の伝送方法,通訳に必要な現地映像の条件について調査を行い,聴覚障害者と通訳者の双方が,モバイル端末でアクセスすることによって情報保障を行うことができるウェブシステムを構築し,その効果の検証と課題を明らかにする. 一般的な機材と無線ネットワークを利用した場合,十分な性能や通信帯域を確保できず映像が切断される可能性がある.今年度は手話通訳の映像について,切断そのものの時間と,その発生間隔に着目してユーザが許容できる範囲を調査した.250ms,750ms,1250msの切断時間,および4500ms,9000ms,13500msの発生間隔について,それぞれを組み合わせた9条件で手話通訳の刺激映像を作成した.刺激映像を9名の聴覚障害者に評価してもらった結果,内容の定量的な理解度については切断時間と発生間隔で差は見られなかった.一方,理解内容に対する自信や,手話の読みやすさ,ストレスや疲労感などの主観評価については,発生間隔については差がなかったが,切断時間については750msと1250msの間に有意な差があることがわかった.つまり,発生間隔はあまり影響がなく,切断時間が750ms以上の時にユーザに悪影響が出ていることがわかった.また,情報保障システムを構築するにあたり,字幕通訳者に対してインタビューを実施し必要な映像や機能等についてまとめた.得られた成果を元に,現在ウェブベースの情報保障システムの設計と構築を行なっている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究計画は,聴覚障害者を支援するための無線ネットワークを用いたパーソナル遠隔情報保障を実現するための調査を進めることであった.無線ネットワークを用いる場合の通信帯域の低さや不安定さを考慮して,映像の切断を考慮したシステムを構築する必要があるため,手話通訳の切断時間とその発生間隔がユーザに与える影響について調査した.また,限られた帯域で現地のどのような音声や映像をやりとりすべきかについて,通訳者に対してインタビューを実施し,通訳に必要な情報を調査した.現在は,得られた調査結果を元に,システムの設計と構築を行なっている.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の調査結果をもとに,無線ネットワークを用いて通訳者側が手話通訳や文字通訳を複数の聴覚障害者のユーザへ配信することができるウェブシステムを構築する.音声と映像の切断が情報保障に与える影響を考慮して,最適な伝送方法について検討する.聴覚障害者が受講する大学講義や学外見学などの現場へ本システムを実験的に導入し,システムの運用しやすさ,情報保障の利用しやすさと提供しやすさついて評価する.また,従来のシステムと比較して十分な遠隔情報保障を提供できるかどうかについても明らかにする.
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次年度の研究費の使用計画 |
通訳者が手話通訳や文字通訳を聴覚障害をもつ複数の利用者へ配信することが可能なパーソナル遠隔情報保障システムを構築するために必要な機材等の準備にあてる.具体的には,サーバ用計算機とクライアント用情報端末の購入費,無線ネットワークを利用するための通信費,ならびにソフトウェアの購入・開発費である.また,本システムの実験に協力してくれた被験者に対する謝金,研究成果を学会や福祉関係のイベント等で公表するための参加費と旅費として使用する計画である.
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