平成27年度は、被災資料の語りの年ごとの経年変化を分析した。 その結果、年を経るごとに被災資料への語りは主語を伴った具体的語りに代わっていることが分かった。さらに、被災資料が収集された地域である鮎川地区では年を追うごとに自分の体験を伴った語りが増加していくことが分かった。一方、それ以外の地域の仙台地区と石巻地区では、見たり、知っているという間接的経験が語られることが増えた。このことは展示資料への距離感の違いからであると考えられる。地域による違いはあるものの、結果的に来館者の語りはその具体性が増すほど、資料の用途や形式的な知識が語られるのではなく、それに伴く来館者自身尾経験が語られるのだということが分かった。 平成27年度に実施された鮎川地区での展示においては、本分析より抽出された子供時代の経験がお手伝いに結びついているという共起関係についてパネルによって紹介した。 さらに、本研究の最終段階として、本分析によって明らかになった、経験を伴った語りをより展示活動に還元するため、語りのキーワードから語りとその文脈を抽出する館内キオスクを試作した。インターフェイスにおいては語りを主語と道具名、トピック名、経験を表す動詞、解釈を表す形容詞に分け選択できるようにし、利用者の関心にしたがって語りを選択できるよう試みた。本館内キオスクは実際に展示利用できる形に開発し、実際に展示内で活用する予定である。
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