研究課題/領域番号 |
24700892
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
梅田 恭子 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (70345940)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 情報モラル / 指導法 / 授業実践 / 体験学習 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、小学校高学年から高校生までの、発達段階や学習者特性を考慮した情報モラルの指導法の開発と、授業実践による評価である。これに基づき平成26年度に行った研究実績は大きく分けて次の2つである。 (1)指導方法の提案と授業実践 平成26年度は情報モラルに関する2種類の指導方法を提案し、実践を行った。1つ目は、平成25年度から引き続き、商取引を対象とした作問演習を用いた指導法である。この指導法では、通常の問題解決演習に比べて、関係的理解(一般的な関係から特殊な手続きを引き出させる力)を促進することが期待される。作問演習と問題解決演習を比較する実践を12月と2月に、2つの高等学校で高校生を対象に行った。2つ目は、体験学習を取り入れた指導法に取り組んだ。先行研究では、体験を伴う情報モラル授業の効果が明らかになっている。しかし、それらは体験をするかしないかに着目され、体験の種類の違いまで踏み込めていない。そこで、「身近さ」を感じるか感じないかの体験を比較する実践を12月に行い、遅延テストを1月に実施した。その結果、「身近さ」を感じる体験の方が、授業後の態度が向上することが明らかになった。 (2)研究成果の発表 上記(1)のことも含めて4件の発表を行った。まず、平成25年度に行ったタブレットPCに関するレディネス調査の結果を分析し、国際学会と日本の学会でそれぞれ1回ずつ発表を行った。また、平成25年度に行った作問演習に関する発表を行い、かつ、紀要としてまとめた。さらに、体験学習に関する研究を研究会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究の方法として、指導法を設計し、実践し、検証し、改善するサイクルを繰り返す実践的な研究アプローチをとっており、それを着実に実行できていることが「おおむね順調に進展している」の理由としてあげられる。 具体的には、昨年は2種類の実践を3校で行い、それぞれの指導法において知見や次年度へ向けての改善点が見いだせた。まず、前年度の課題として挙げた、体験的学習と作問演習と関係的理解の3つの関係のうち、体験的学習を取り出して、新たに研究を行った。中学校において12月に4クラスの実践を行い、1か月後の遅延テストも実施した。改善点としては、直後の講義の影響が事後テストに強く反映される結果となったため、体験的学習で得た成果を特定する必要があることが明らかになった。また、体験学習の定義づけや、体験と授業の関連付けも検討する必要があることがわかった。 次に、平成25年度に引き続き作問演習と問題解決型演習を比較する実践を行った。しかし、作問演習の効果の定義や、対象とする分野の構造分析があいまいなため、評価もあいまいになった。次年度の改善としては、作問演習の効果の明確化と、内容に対する構造分析、関係的理解の再定義が必要であることが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度も2つの情報モラルの指導法の検討を行い、授業を設計し、実践を行い、評価、分析を進めて、さらに最終年度に向けて指導法を深めていく予定である。 まず、作問演習については、情報モラルにおける作問演習の効果の再定義を行う必要がある。そのために、数学教育などの先行領域で作問演習を行うことによって、どのような認知モデルにおいて何が促進されるかを、もう一度再調査し、再点検する。その上で改めて情報モラルの特定の領域における認知モデルと、作問演習で促進される効果の提案を行いたい。その上で、指導法を提案し、27年度後半に高等学校で実践を行う予定である。 次に、体験学習については、講義と体験のハイブリッド形式が最も効果的であることは、先行研究でわかっているが、体験で身につくこと、講義で身につくことを整理したい。また、何を体験させるのか、どんな体験がより効果的なのかという種類等についても改めて明確にし、対象を限定したい。その上で、授業の設計や評価の仕方についての検討を行い、小学校、もしくは中学校で実践を行う予定である。 さらに、これらの指導法を実践するにあたって、ディスカッションやグループ活動を行う場合も多い。そのため、協働して学ぶことについても先行研究を調査し、指導法に組み入れられないかを検討していきたい。 尚、この実践や研究、評価は、当初の予定通り、本学の初等・中等教員養成の学生や大学院生と共に行う。また、全国大会や研究会、国際会議などで随時発表を行い、成果の発表と他の研究者からの情報収集を積極的に行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
特に物品費に差額が生じた。その理由としては、実践をお願いした学校に、タブレットPCや実践に必要な設備が既にあったため、購入するのに必要な物品が予想よりも少なくて済んだためである。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の研究計画は、平成26年度で実践をした指導法を再度検証することである。そのため、精緻化するために必要な文献や、調査を行うために使用する。 次に、授業実践のための、教材費、交通費、謝金に用いる。まず、授業実践に関する教材、教具等を購入する。新しい実践校になる可能性もあるため、学校に合わせた物品を購入する。さらに、本研究では、学生や卒業生の教員と行うため、謝金に用いる。なお、授業実践に参加する人数によってはバスの借り上げ等も行う。また、実験を行う可能性もあり、実験参加者に対して謝金を支払う場合もある。さらに、研究成果を学会で報告し、最新動向の把握や意見交換を積極的に行う。また、紀要や論文誌等への投稿も行う。それらの研究成果の発表にかかる費用、別刷り代、場合によっては英語の論文の翻訳費や校閲費に使用する。
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