本年度は,2Dでおこなわれている遠隔教育の例として,大阪大学サンフランシスコ教育研究センターから行われている遠隔授業を取り上げ,その授業の効果を測定した.その結果,受講生は非受講生に比べて元々海外に高い関心を寄せていることや,海外で就職や生活したいと思う程度には,同一性の発達が関わってくること,遠隔教育の場はそうした目的に即したデザインになっていることなどが明らかになった.本研究は立体映像には直接は触れなかったが,従来型の遠隔講義が比較的長期間の間にもたらす効果について,同一性などの心理的側面との関係から明らかにすることができた. また,本年度は,2Dの映像と3Dの映像が遠隔教育場面にもたらす差異について検討するために実験を行った.実験では,3D映像と2D映像を用いて15分程度の授業映像を被験者に見てもらい,授業評価アンケートで一般的に質問される観点における授業の知覚,立体感・臨場感・疲労感などの映像の知覚,および社会的存在感の観点から検討を行った. その結果,3D映像には立体感があり,講義に臨場感を感じたり,講師を身近に感じたりするものの,その映像視聴には違和感や目の疲労感を伴い,映像の見やすさも2Dに比べて劣るといえることが示唆された.また,教員の授業方法や,理解度,満足度など,授業に対する受講者の知覚については,2Dと3Dで違いが見られないこと,社会的存在感についてもそれは同様であることが示された.これらのことから,3D映像は,遠隔講義にはメリットが少ないためあまり適さないことが示唆されたが,立体感や臨場感が効果を持つ可能性がある,交流学習などの用途には,眼の疲れなどを考慮すれば,利用出来る場面があり得ることも示された.
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