教育評価方法において,近年,形成的評価は学生の達成度を向上させる最も効果的な戦略の1つとして注目されている.その中でも「学生の理解を把握・予想する」アプローチでは,一般的に教員は様々なテストを行い,それらのテスト結果から解答の誤りを見て学生の理解を把握している.より詳細な学生の理解を把握・予想するためには,膨大なデータから誤り傾向を解析することが必要であり,膨大なテスト結果のデータを解析するツールが不可欠となる.そこで本研究では,Moodle上の小テストを対象とし,まず(1)テストの評点を成分とするベクトルで学生を記述し,学生群を多次元空間から2次元空間へ可視化し,2次元空間上で人間の直観を活用した学生に対するクラスタリング(クラスタの検出)を行った.次に(2)クラスタ内の学生についてテストの問題ごとの平均点を折れ線グラフにより可視化することによってクラスタの解釈を行った.(1)では,非線形のSammon法と線形のK-L展開の2つの可視化手法を用いた.(1)と(2)で用いられる可視化機能をMoodle上のモジュールとして実装し,実際のテスト結果を用いてツールの評価をした結果,教員は学生の繰り返される誤り傾向を容易に把握することが期待できる. eラーニングシステムにおける安全性と利便性の最適なバランスモデルとして,中村らによる研究(セキュリティ対策選定の実用的な一手法の提案とその評価,情報処理学会論文誌,2004)を参考に利便性の観点を取り入れたモデルを考案した.その際に利便性の数値的な裏付けが必要であるため,従来より収集しているデータ(セキュア化によるレスポンスタイムや操作性に関するアンケート結果など)をもとに作成した.その結果,安全性と利便性はすべてがトレードオフの関係ではなく,相互補完の関係になる可能性があり,セキュリティ対策の選択に有用な視点となると考えられる.
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