本研究は,モバイルデバイスを用いて動画コンテンツを視聴し,学習する際に,視覚および聴覚の介入があった際,学習効果はどのように異なるか,また問題の種別によりどのような差違があるかを明らかにすることを目的に実験を行い,以下の知見を得た. (1)モバイルデバイスを用いて動画コンテンツによる学習を行う際,視覚および聴覚に対する介入があった場合,内容説明問題に対しては有意にパフォーマンスが下がることがわかったことから,より深い理解を求める学習に対しては,デュアルチャネルの処理が必要となるが,記憶や反射的な反応が求められる学習に対しては,どちらかの情報に欠損があっても処理が可能であると解釈できる.よって,電車環境での学習に関しては,その学習内容,方法を十分に精査しなくてはならい.(2)被験者の多くは主観的に,視覚介入よりも聴覚介入を,煩わしく思う傾向があることが明らかになった.自由記述による質問でも,その内容を支持する回答が目立った.このことから,学習者は,聴覚介入に対して,より多くのストレスを感じていると考えられる.よって,電車環境下で必要な情報を得るためには,聴覚ではなく視覚による支援の方が好ましいと考えられる.(3)情報の介入がある際,被験者の多くはコンテンツ内に提示される文字情報を頼りに学習を行っていることがわかった.電車環境下で動画コンテンツによる学習を行う場合,文字情報を添付することで一定の学習効果を担保することが出来ると述べた,渡辺ほか(2010)の知見を支持した. 今回の研究により,内容理解を伴う問題に関して,介入情報が学習効果を低減させることが明らかになった.これより,内容理解を伴うようなより深い学習でなければ,介入がある環境下においても介入がない場合と比較して顕著な学習効果の低下が起こらないことが示唆された.今後さらに,定性的な観点を踏まえ実験が必用であろう.
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