「科学技術文書の論理性を推敲できる文章作成教育システム」を実現するため,ユーザ(学生)によって入力された文書から,論理的に問題のある個所を自動検出し指摘する機能の実装および評価を目指した. まず,学生の書いたレポートの中から非論理的な記述部分を抽出・分析し,3つの典型的なパターンがあることを発見した.そのうちの1つが,「よって」「したがって」といった因果関係を表す接続詞,「つまり」「すなわち」などの言い換えを行う接続詞,「このように」「こうして」といった結論を導く接続詞を強引に使用し論理の飛躍が起こっているケースである.そこで,これらの接続詞を「論理を導く接続表現」と定義し,「学生レポートにおける論理の飛躍は『論理を導く接続表現』を伴って起こりやすい」という仮説を立てた. この仮説を検証するため,まず,良質な科学技術文章を大量に収集したものと,学生が書いた実際のレポートの,2種類のコーパスを用いて,論理を導く接続表現の出現傾向を調査・分析した. その結果,総語数に対する論理を導く接続表現の出現頻度は,学生レポートの方が明らかに多いことがわかった.説明が不十分な状態で結論を急ぎ,論理の飛躍が起こっている可能性があると考えられる. さらに,接続表現ごとに使用傾向を分析した.その結果,学生レポートでのみ出現頻度が高いものが数種類存在し,それらの表現はレポートで使用することはふさわしくなく,学生のレポートに用いられていた場合は問題点として指摘することが妥当であることを確認した. これらの分析に基づき,システムを構築し,実際の授業において運用をおこなった.
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