研究課題/領域番号 |
24700910
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
高橋 勇 北里大学, 一般教育部, 准教授 (40345674)
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キーワード | e-Learning / 知的教育支援システム / インタフェース / エージェント |
研究概要 |
本研究では,e-Learning形式の授業において学習者のトラブルを解決するために自律的に動作するティーチングアシスタント(TA)の役割をするエージェントを設計・開発して運用・評価することを目的としている.昨年度は予備的な調査にもとづき,支援の目的を狭い範囲(次にすべき作業手順を示すこと)に限定したうえで最低限必要な機能を持つプロトタイプシステムを設計・実装した.本年度はプロトタイプシステムの動作検証を行ったうえで,実際に学習者の役に立つシステムを構築するために,TAが授業でどのような支援活動を行っているかを詳細に調査・分析し,プロトタイプシステムに追加・拡張すべき機能を検討した. 具体的な方法としては,まずコンピュータを利用する対面形式の授業において実際にTAが行っている支援の様子を撮影し,その動画から教育方法とその意図を整理した.その結果,エージェントに与えるべき教授戦略(例えば「一般的な知識や手順を説明する」「学習者へ現状を把握させる」など)と,エージェントに実装すべき基本動作(「オンラインの資料を示す」「学習者に質問して答えさせる」など)が整理された.次に,この結果を実現するために必要な機能及びシステム構成を検討した.その結果,教材知識として必要な要素(例えば「一般的な知識と作業手順を関連させること」「作業の前提条件とその確認手順を付与すること」など)やアドバイス生成時に必要な機能(「現状に基づいて一般的な手順を具体化する機能」など)をはじめとした,本研究の目的を達成するためにエージェントに実装すべき要素が明らかとなった. この成果は「汎用TAエージェントにおける教授戦略の検討」というタイトルで情報処理学会第76回全国大会で発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度はTAの支援活動を撮影して分析し,それを実現するためにエージェントに必要な機能を整理してシステムの再設計を行った.この活動は研究計画当初は24年度に行う予定であったが,昨年度は本研究の手法が実装可能であるかを確認することがまずは重要であると考えてプロトタイプシステムの実装を優先させた.その結果,昨年度は実装面では達成度が予定よりもかなり進展していた.それに加えて本年度の研究により昨年度予定していた活動が達成できたため,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度には手順を示す支援方法に限定してプロトタイプシステムを実装し,25年度には実際のTAの支援活動に基づいた教授戦略を明確化してエージェントに追加すべき機能等を整理し,システムの再設計を行った.しかし,新たに検討した機能を実装する作業はまだ途中段階にある.平成26年度は本年度の成果にもとづいた実装を完了させ,手順を示す以外の支援も行えるようなエージェントを開発する.また,限定された環境でシステムの動作試験を行い,学習者に様々な方法で適切なアドバイスができるかを検証していく予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の主な活動であるTAの授業の様子の録画と検証については昨年度に購入した撮影機材で実施できた.学会活動については昨年度の繰り越しぶんを除き,本年度の発表は近隣で行われたために出費が抑えられた.また,システムの実装が一部のみにとどまったために開発用に追加でソフトウエアや関連書籍等を購入せずに済み,動作検証用パソコンも当初予定よりも費用がかからなかったため,次年度使用額が生じた. 平成26年度は本年度の成果に基づいた実装を本格的に行うため,動作検証用のパソコンや適宜関連するソフトウエアや書籍等を購入するために本補助金の一部をあてる.また,例年通りバックアップやセキュリティ対策等の本研究を安全に進めるための費用や成果発表のための旅費や研究会参加費に補助金を利用する.
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