本研究では、e-Learning形式の授業における学習者のトラブルを解消することを支援するティーチングアシスタント(TA)の役割をするエージェントシステムを提案することを目的としている。本研究の目指すTAエージェントの特徴は、パソコンの画面をキャプチャした結果と、教員が作成した画像入りの作業手順書にもとづいてアドバイスを提供することにある。本研究では初年度に最もシンプルなプロトタイプを作成し、次年度に実際のTAの支援活動を観察・分析して必要な機能を明確にし、昨年度はその結果に基づいてシステムを拡張した。昨年度までの研究で、注目すべきアイコンをポインティングしたり、もしそのアイコンがウインドウ等に隠れていた場合にはそれを探すように指示をするなどのアドバイスをしながら学習者を支援するシステムを構築できた。しかし、学習者との対話や指導の流れについては固定されたひとつのプログラムで実現しており、柔軟性に欠けていた。 そこで本年度の前半では、学習者の現在の状況やエージェントのそれまでの指示に応じて柔軟に支援の流れを制御する方法を検討した。その結果、ひとつひとつの支援方法や対話方法を別々のジョブとして実装し、その列をキューのような形で順番に実行する手法を考案した。この手法の特徴のひとつは、個々の支援の途中で一時的に別の指導が必要になったときにキューの先頭へジョブを追加する点にあり、これにより固定されたプログラムと比較して柔軟な支援の流れが簡便に実装できるようになった。この手法を実装したシステムを用い、限定的な範囲ではあるが、典型的な学習者のいきづまりに対して学習者と対話をしながら支援ができることを確認した。 本年度の後半では、これまでの4年間の研究の成果をまとめて「コンピュータを用いた学習を支援する汎用TAエージェントの検討」というタイトルの論文にし、北里大学一般教育紀要にて公表した。
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