研究課題/領域番号 |
24700918
|
研究機関 | 大阪産業大学 |
研究代表者 |
大野 麻子 大阪産業大学, 工学部, 講師 (90550369)
|
キーワード | 教育工学 / 知的学習支援 / ソースコード類似性検出 / 授業支援システム / 記述スタイル / ソースコード盗用発見 / 記述スタイル教育 |
研究概要 |
平成25年度は本研究で提案する二つの手法、すなわち、「内容に基づく類似性検出手法」(手法A)および「作成者の記述特徴に基づく類似性検出手法」(手法B)について次のような改良を行った。(1)手法A・B共に、Javaに限定した前処理のみを定義していたため、多言語への対応を目指した改良を行った。具体的には、前処理部分の独立性を高め、汎用性を向上させた。次に、C言語向けの前処理を新たに定義し、実際の授業で提出されたC言語のプログラムを用いて二手法の類似性検出能力の評価を行った。(2)手法Bについて、ソースコード以外のデータ系列への適用を通して、これまでに行ってきたモデルの出力確率を用いて行う作成者認証に加え、学習済みのモデルのパラメータ用いて作成者の特徴を比較するという用法の具体的な手順について検討した。 (3) 前述の二手法の改良・拡張にも対応させながら、手法Aを採点機能として、手法Bを盗用発見機能及び可読性チェック機能として実装したWebベースの統合プログラミング授業支援システムのプロトタイプを開発した。教員用クライアントおよび学生用クライアントのGUIについては、聞き取り調査の結果等を考慮し、いずれもブラウザベースとすることとした。(4)採点機能を有するプログラミング授業支援システムに関するサーベイを行い、本システムの位置づけについて明らかにした。また、手法Aを実装した本システムと既存手法の一つであるメトリクスベースのシステムとの比較実験を行った。結果として二手法間の類似性検出精度に大きな違いは見られなかったが、手法Aではメトリクスベースの手法のように個々のソースコードの内容に応じて類似性尺度、すなわち、使用するメトリクスの内容を検討する必要がない。つまり、メトリクスベースの手法と同等の高精度かつ高速な類似性検出がユーザの負担の少ない形で行えるという本手法の優位が確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は予定していた改良内容に加え、多言語への対応を目指した手法の拡張や、他形式のデータへの適用を通した手法の手法の改良など、多くの成果が得られた。これらの成果をより多く提案システムに取り入れるため、システムの設計に関する検討や打ち合わせを年度の後半まで実施し、その後開発を行った。 これらを総合して評価すると、本研究全体の進捗は当初予定に対し概ね順調であるといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに開発したシステムは評価実験を行うにあたり正常に動作可能な状態にあるが、実際の授業での運用においてはまだ見直しや調整が必要な箇所が残されている。 平成26年度には、前年度に改良・拡張を行った二手法と他の既存手法とのより詳細な比較実験を行い、調整を行いながら提供する各機能の性能を向上させ、大学のプログラミング授業に特化した統合授業支援システムを完成させる。さらに、実際の授業において使用しながら、提供する各機能および操作性について評価を行う。あわせて、本システムを用いることで効果が期待される、盗用発見に伴う教員・学生の精神的負担軽減についても調査・検討を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度には、GUIも含め統合プログラミング授業支援システムを完成させた上で評価を行うこととしていたが、本研究で提案する「作成者の記述特徴に基づく類似性検出手法」について他形式のデータへの適用を行う試みに着手したところ、予想以上の成果が見込まれたため、まずはこれらの内容について実験結果を取りまとめ、著書の分担執筆およびレター論文執筆という形で成果報告を行った。 これに伴い、当初予定していた手法の改良に加え、上記の試みの結果を踏まえながらより精度の高い類似度算出法について検討を続ける必要が出たため、平成25年度中の開発内容はシステム基幹部分の構築までとした。 平成25年度に引き続き、統合プログラミング授業支援システムの運用面での改善(GUI、データ通信速度、安定性等)についての開発およびテストを継続して行う。これに伴い、開発および開発後のシステム評価の一環として実施する聞き取り調査などにおいて、謝金およびデータ記録・整理等を行うための消耗品費が必要となる。次年度使用額はこれらに充てる。
|