研究課題/領域番号 |
24700921
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研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
見上 公一 総合研究大学院大学, 学融合推進センター, 助教 (60589836)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 研究資源 / 難病研究 |
研究概要 |
本研究は難病研究資源バンクが日本の難病研究の推進の為にどのような役割を果たすことが期待され、その期待に応える為にはどのような技術的あるいは社会的な課題があるのかを明らかにすることを目的として実施しているが、1年目にあたる平成24年度は日本の難病研究の現状に対する理解を深める為の情報収集活動と先行事例とも言える生命科学推進の為の研究資源管理プロジェクト「ナショナル・バイオリソース・プロジェクト」に関する文献の収集とインタビューを含めた調査を進めてきた。 日本の難病研究は、「難病対策要綱」の制定以後、40年に渡って拡大と修正を繰り返しながら難治性疾患克服事業として難病患者に対する国家的支援の在り方が規定される中に位置づけられてきた。しかしながら、近年、特に欧州を中心として国際的な動きが活発になっている「希少疾患」と呼ばれるものとはその性質が異なることから、本研究ではまず日本の難病という枠組みはどのように動いているのか、欧州の希少疾患に関する議論はどのようになっているのか、そして、国内で希少疾患に該当する試みとしてはどのようなものがあるのかについて情報を集めてきた。これらの情報をもとに次年度以降の調査活動を進めていくこととした。 また、ナショナル・バイオリソース・プロジェクトも既に開始後10年を越える国家プロジェクトであるが、発足の経緯や活動の内容、そして抱える課題などについて情報収集を行った。異なるリソース間ではその活動に違いがあるものの、品質保証の為の技術の向上や安定的な供給の為のシステム作りなどの活動では密な情報交換が行われていることが分かった。国際的にも戦略的なリソースの整備の事例が見受けられることからも、このプロジェクトの詳細な調査は難病バンクを検討する際にも有効であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初想定していた難病バンクとは事業の形態が変化していることを受け、本研究の調査対象としても、その内容について見直しを行うことが必要であった。また、国内の議論として、難病対策の見直しが行われているところであることも踏まえ、難病研究全体の推移の中で難病バンクの役割を理解する必要があることから、情報収集に当初計画以上の時間を使っている。ただし、このような情報は今後実施するインタビュー調査などに不可欠であり、近年活動が活発化している希少疾患への対策という点がどのように影響を及ぼすかなど、全体像が見えてきたということは大きな収穫である。収集してきた情報の整理とインタビュー調査の精力的な実施が次年度の課題となっている。 また、難病研究ではゲノム解析が一つの重要な柱となってきていること、そしてその為にも多くの患者情報の収集が求められることから、難病バンクという枠組みだけではなく患者レジストリやゲノムデータバンクなどの複数の活動について理解することが必要であり、これについても少しずつではあるが進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
1年目の調査活動によって、日本の難病研究についての枠組みとナショナル・バイオリソース・プロジェクトの活動内容についてある程度の情報が集められており、次の作業としてはそれぞれの領域について研究ネットワークの在り方を可視化する必要がある。 ナショナル・バイオリソースプロジェクトではそれぞれのリソースセンターが研究ネットワークのハブとして機能していることから、インタビュー調査を含め、更に詳細な情報を集めることが必要である。次年度の前半では特にこの調査に力を注ぐこととし、各リソースの形成する研究ネットワークの中でリソースセンターが担う具体的な役割を明らかにすると共に、その長期的な維持に向けた課題と他のリソースのネットワークとの関係の在り方について理解していく。 後半ではそのような分析内容を一つのモデルケースとして用いることによって難病研究について調査を進めていく。今までのような疾患を中心とする「研究班」という体制から、疾患の部位等によって集中的な研究のコーディネーションを行う体制へと移行するという議論も出ていることから、上記のような複数ネットワークという視点から分析を行うことが有意義であると考えられる。この為にも、現在議論が進められている難病対策見直しの議論について、丁寧に追っていくことが必要と考える。 最終年度はこのような分析をもとにして、患者や医師、研究者などを含めた関係者とのコミュニケーションを取る機会を設け、今後の難病研究の在り方を議論すると共に、その中で難病バンクや患者レジストリがどのように機能することが求められるかをまとめていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
出版物やインターネット上で公開されている情報も非常に豊富であり、それらの収集に時間を費やしたことで、インタビュー調査のほとんどは次年度へと繰り越しになっている。次年度の研究費の多くはインタビュー調査と関連国際会議への参加のための旅費がほとんどを占めることになる。それ以外では、ナショナル・バイオリソース・プロジェクトに関する調査・分析が一段落することが予定されているので、その成果発表に関連する諸経費として利用する。
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