本研究では、戦後の遺伝学と育種研究を歴史学的に分析し、中でも日本の科学の「独自性」について考察することを目的とした。特に、第二次世界大戦後においても、遺伝学へのアプローチの仕方は国際的に一様であったわけではなく、その違いによる摩擦も起きていたことを明らかにした。日本では、一つの生物を中心に据えて、その生物の理解を深めるためにそれに関わる様々な現象を研究するスタイルがとられていたが、欧米の多くの遺伝学者は、一つの科学的課題を中心に据えてその課題に特化した研究する傾向にあった。この違いは、育種と遺伝学の関係のあり方に起因すると考えられるが、その社会・文化的意味等については現在考察中である。
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