本研究の成果は、以下の通りである。再生可能エネルギーの社会的受容性研究が示唆する制度設計の方向性としては、単に経済的合理性だけではなく、地域福利向上も目指すような制度設計の議論が重要である。特に再生可能エネルギー事業に伴う利益と負担のバランスを考慮した事業計画や制度設計の重要性が指摘できる。 次に本研究では、再生可能エネルギー事業の紛争事例について複数箇所の聞きとり調査を実施した。その調査の結果として、事業者は事業開発の準備段階や計画段階において立地地域の住民と「インフォーマルな調整」を実施している。このような調整過程は、多くのケースでは事業者と地域住民の対話の数やコミュニケーションの質を高め、地域受容性の向上に繋がっている。ただし、紛争が長期化しているケースでは、事業者が実施する「インフォーマルな調整」が、地域からの拒絶感や不信感に繋がっているケースもある。 そのため、事業者の役割としては、事業計画段階や事業開始後も含めて町内会単位で地元からの意見聴取や対話に多くの時間を費やすことが極めて重要である。また、その際の対話や意見聴取等が、特定の住民や町内会に偏らないような配慮も重要であろう。 また、このような問題を解決するための一つの方策としては、地方自治体において再生可能エネルギー条例を制定することや再生可能エネルギー事業に関する土地利用計画(ゾーニング)を実施することが重要である。さらには、再生可能エネルギー条例やゾーンニング等の策定主体として地方自治体の役割を明確に規定した、再生可能エネルギー利活用に関する総合的な法制度が必要だと指摘できる。
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