研究課題/領域番号 |
24700931
|
研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所 |
研究代表者 |
間渕 創 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存修復科学センター, 客員研究員 (80601195)
|
キーワード | 保存環境 / 文化財 / 生物被害 / 博物館 / 自然共生 / 浮遊真菌測定 / IPM |
研究概要 |
自然共生型博物館の施設内における浮遊真菌濃度予測が本研究の目的であり、三年間の研究期間を計画している。 三年計画のうち第一年次では、自然共生型博物館の施設内において検出されるカビを主とした浮遊真菌のうち、大きな浮遊真菌の発生源である、施設周囲の里山など、野外を由来とするものの判別について測定を行った。植生や環境をもとに選定した地点の、浮遊真菌濃度の推移と菌叢の比較を行うことで、博物館を囲む野外微生物環境の標準化を行った結果、a)①新博里山⑤市街地、b)②鎮守の森③森林、及びc)④海岸の3タイプに分類された。 第二年次である本年度は、引き続き野外微生物環境の標準化行うと共に、計画通りモデル施設である、三重県総合博物館内での野外由来微生物の浮遊真菌濃度(実測値)と気流測定による浮遊真菌予測濃度(計算値)の比較・評価を行った。シャッターや扉で区切られた、屋外・トラックヤード・荷解場・収蔵庫について浮遊真菌濃度測定と気流測定(風向及び風量)を行った。その結果、野外浮遊真菌濃度を基準とした場合、室内の浮遊真菌濃度の実測値と計算値で±12~44%程度の差が見られ、季節によって差が大きくなる傾向が見られたが、浮遊真菌濃度予測が可能出ることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度は三年計画の第二年次であり、浮遊真菌濃度測定値と気流測定による浮遊真菌濃度の計算値の比較を行うことを当該年度の目標とした。なお、前年度から引き続き野外由来微生物の標準化も行うこととした。 浮遊真菌測定と気流測定をモデル施設で行い、実測値と計算値の比較を行うことができた。その結果浮遊真菌濃度予測が可能であることが示唆された。これらのことから、当初の計画通り研究を進めることができたと考えている。 ただし、季節によって実測値と計算値に±12~44%と違いがみられたことから、気流測定の精度や野外微生物フローラの季節的な変動を考慮するなど、予測精度の向上をはかる必要がある。 また再現性の高い野外微生物環境の標準化について、形態観察による分類に限界があることから、計画の最終年次ではあるが、平成26年度には継続的な野外微生物測定と共に、分子生物学的手法によるフローラ解析が必要である。
|
今後の研究の推進方策 |
(今後の推進方策) 三年計画のうち最終年次となる次年度は、計画通り実際の博物館活動が行われている状況での検証を行う予定であるが、測定頻度は減らすものの、引き続き野外微生物環境の標準化行、モデル施設内での野外由来微生物の浮遊真菌濃度(実測値)と気流測定による浮遊真菌予測濃度(計算値)の比較・評価を継続して行うこととする。 (次年度の研究費の使用計画) 当初の計画通り研究は進捗し、その成果が得られているが、研究進捗に伴いさらに再現性の高い野外微生物環境の標準化が必要であり、分子生物学的手法によるフローラ解析が必要であると判断されたため、研究費使用を一部延期した。この課題を解決するために、次年度はRNAによる菌種同定費用として延期した研究費使用を執行する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究進捗に伴い、さらに再現性の高い野外微生物環境の標準化が必要であり、形態観察による微生物の分類に限界があることから、分子生物学的手法によるフローラ解析が必要であると判断されたため、研究費使用を一部延期した。 この課題を解決するために、次年度はRNAによる菌種同定費用として延期した研究費使用を執行する。すでに現時点で同定手法は検討済であり、また同定委託先の選定や概算費用などについても計画済であることから、野外微生物の捕集量が増加する平成26年度夏季までに執行する予定である。
|