研究課題/領域番号 |
24700933
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所 |
研究代表者 |
楠 京子 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 文化遺産国際協力センター, アソシエイトフェロー (20609820)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 絵画修復 / 絵画制作 / 膠 / 剥落止め / 展色材 |
研究概要 |
平成24年度は、日本国内で製造されている膠を収集するとともに、絵画書籍の修復を行っている修復工房および画家の協力を得て、絵画修復と制作の現場で使用されている膠についての情報収集を行った。 膠の収集については、過去に収集した古い膠(製造業者が廃業し現在は製造されていない膠、修復技術者と画家がストックとして所有していた30~50年前の膠)に加え、現在流通している膠のほとんどを入手した。一般的な牛皮由来の膠に加え、鹿皮由来の膠、海外産のウサギ膠も収集した。これらの膠は、絵画修復や制作の現場で現在用いられている又は今後の使用が検討されているものである 絵画の修復および制作の現場での調査を通じて、各種膠の使用感や使用方法の詳細についての情報提供を受けた。修復技術者や画家らは、これまで使用してきた三千本膠、粒膠(共に牛皮由来)の製造元の廃業や製造縮小に伴い、新規の製造元の膠の使用テストを行っており、接着力や水への再溶解性の点で各膠の間で相違があるという話であった。 また、収集した膠について、JIS規格K6503に定められている手法で化学的組成、水分、灰分、油脂分、不溶解分、の測定を行った。同様にして膠水溶液の粘度、融点、凝固点、pHの測定も行った。粘度や凝固点の値と、修復技術者と画家の感じる塗りやすさや水への再溶解性の程度の間に関連があると推測される。これらの関係性を明らかにすることで、膠の使用状況に応じたより的確な使い分けに言及することができ、絵画修復と制作の現場に役立つものと考えれられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度に予定していた調査、実験作業をほぼすべて行うことができた。 絵画修復と制作における現在の膠の使用状況について把握することができた。また、収集した膠について分析を行い、化学的組成や物性の基本的なデータを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、紙本、絹本、板絵などの絵具サンプルを作製し、接着力や水への再溶解性、膠が乾燥して塗膜となった後の収縮度合、柔軟性などについて試験を行う予定である。また、前年度に行った膠の使用方法等に関する調査や化学分析の結果なども合わせて検討を行う予定である。 サンプルを用いた物性試験の場合、いかに実際の使用状況と整合性があるかということが重要であると考えられるため、絵具サンプル作成や試験実施に際しては、修復技術者や画家の協力を得て行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
絵具サンプル作成用の材料費として約300,000円の使用を予定している。 サンプルを用いた官能試験を行うための実験消耗品として約100,000円の使用を予定している。 絵画の修復作業における膠の使用事例調査のために関西方面への出張を3回程度予定している。
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