日本国内で製造されている膠を収集するとともに、絵画書籍の修復を行っている修復工房の協力を得て、修復現場で使用されている膠についての情報収集を行った。工房では、これまで使用してきた三千本膠、粒膠(共に牛皮由来)の製造元の廃業や縮小に伴い、新規の製造元の膠の使用テストを行っており、各種膠の使用感や使用方法の詳細についての情報提供を受けた。また、収集した膠の使用感等の官能試験を行うために、紙本絵画を想定して作成したサンプルを用いて、各膠の接着力や水への再溶解性、柔軟性などについて試験を行った。 本年度は、昨年度までに実施できなかった、剥落止め時の膠水溶液塗布順による絵具層の色相や明度の変化、接着性ついて検討を行った。試験の結果、顔料の種類によっては、膠水溶液を塗り重ねる場合に、低濃度のものから高濃度のものへ塗り重ねた方が接着性が良くなるもの、特に塗布順に影響を受けないものがあることが示唆された。
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