トンボ目に属するベッコウトンボは日本国内において生息地が急激に減少し、数えるほどの沼地にしか安定的な個体群が維持されていない。絶滅の渦(Extinction Vortex)の概念から現在まで継続している個体群が遺伝的多様性をどの程度維持しているかは、非常に保全上重要な情報である。「種の保存法」で保護されているため、DNA抽出に用いる組織サンプルの入手が困難であったが、抜け殻内に残存する組織片を用いることによってPCRなどの実験に十分であることが判明した。また、静岡県内の地域集団についてミトコンドリアのハプロタイプを調べたところ、非常に良好なハプロタイプ多様度が維持されていることがわかった。
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