本研究は、博物館における寄贈品と寄贈者に関する情報から明治初期の博物館収蔵品コレクションの形成について明らかにしようとするものである。明治期の博物館の歴史を明らかにすることは、歴史学、美術史学、博物館学いずれにおいても重要である。そこで、わが国で最も歴史の長い東京国立博物館の寄贈品と寄贈者を対象として基礎情報のデータベース作成を試みた。対象は博物館の草創期といわれる明治初年から明治19年に限定した。 1.方法 まず基礎データとして現行の収蔵品データである「新列品管理簿」から伝来 が「寄贈」「引継」「伝来未詳」となっている作品を抽出し、館史資料の「美術品台帳」、「列品記載簿」「列品録」を参照して寄贈作品と寄贈者を特定してゆく。そして、寄贈者がどのような人物であったのか、社会的な身分や美術に関して専門にしている分野、趣向などの情報を収集する。個人の特定には人物辞典をはじめ、各地で編纂された地方史や、当時の職員録等を活用し、情報を収集する。 2.成果 「新列品管理簿」及び館史資料から得られた対象年代の寄贈品の総数はおよそ5700件でそのうち約2400件は現在も東京国立博物館の収蔵品として管理されている。その他は廃棄や管理換に伴い現在は「新列品管理簿」から除却されているものであるが、列品録から判明した作品に関しては収蔵品番号が特定できないものも含まれる。寄贈品の情報から得られた寄贈者名は1110名に上る。そのうち、調査により氏名と住所以外の何らかの情報が得られたのは476名である。また、寄贈者名から推測して個人ではなく会社や組織など団体と思われる寄贈者は76件確認できた。 今後は未調査の館史資料から新たな寄贈者の確認と、すでに氏名が判明している寄贈者に関する更なる文献による人物調査を進めて行きたい。また、データベースの公開も視野にデータの整備を進めてゆきたい。
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