本研究では,国内でもっとも寒冷な環境にあり永久凍土が存在する富士山山頂部において,地温の季節変化・経年変化と,地温を支配する諸要因を観測し,それらの関係性を明らかにし,物理探査も援用して,これまで明らかではなかった富士山の永久凍土分布を求める。さらに地形変化を観測し,気候変化に伴う凍結融解状況の変化が,生態学的に日本唯一の上部高山帯とされる山頂部の地盤に与える影響を評価する。 研究期間の最終年度も,データロガーを用いた地温と関連する気象要素の通年観測および走査型レーザー測量器を用いた再測量(地形変化観測)を行った。また,原位置透水試験も実施した。永久凍土の地温は年々変動が小さいが,永久凍土のない地点の地温は年々変動が大きかった。透水試験の結果,地盤内へ水の浸透が少ない地点のみ,永久凍土が存在することが明らかになった。また,観測期間内において,顕著な地形変化は見られなかった。観測結果に気象履歴を対応させると,過去数十年間の気温上昇によっては,山頂部の永久凍土はほとんど融解していないと見積もられた。成果については,2014年6月の第4回欧州永久凍土会議で発表したほか,2015年2月にはスイスのTEMPS (the Evolution of Mountain Permafrost in Switzerland) プロジェクトの総括シンポジウムにてキーノートスピーカーとして招かれた。
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