研究課題/領域番号 |
24700947
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
勝田 長貴 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (70377985)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 浅間火山 / 湧水 / 河床堆積物 / 年層 |
研究概要 |
本年度は、浅間火山南麓の濁川において、源泉から下流の約5キロメートルの範囲に7つの臨時観測点を設け、年6回の隔月で水質調査を行った。現地において、水温、pH、Eh、導電率、溶存酸素濃度、二酸化炭素分圧、流量を計測した。採水した水の化学成分については、陽イオン濃度(ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、マンガン、鉄、ストロンチウム)と陰イオン濃度(フッ素、塩素、硝酸、硫酸、リン酸)、安定同位体比(水素、炭素、酸素)となる。さらには、河床に方解石を主体とする堆積物の縞の成長のモニタリングを行った。その結果、源泉水の水質特性、ならびに化学成分の濃度は、一年を通じて、ほぼ一定に推移した。これに対して、河床に堆積物の沈積する場では、一年を通じて、方解石に対して過飽和であること(SIcが0.5以上)、水温、導電率、カルシウム、ストロンチウムで季節変動が見られ、このうち、カルシウムとストロンチウムについては、冬季に比べて夏季にイオン濃度が低下することが明らかとなった。一方、陰イオン濃度については、通常の陸水に比べて、塩酸と硫酸が高濃度であることが分かったものの、季節変動に対応する変化は見られなかった。河床堆積物の縞構造は、明色層と暗色層の繰り返しにより特徴づけられる。明色層は針状の方解石(長さ5-10ミリメートル)、暗色層は細粒の方解石(直径5ミリメートル以下)からなり、それらの粒子の間には、鉄水酸化物が所々に挟まれる。また、暗色層と明色層の間には、鉄水酸化物が濃集する。隔月で採取した堆積物の最表層の顕微観察した結果、夏季に明色層、冬季に暗色層が作られていることが明らかとなった。以上の水文学的・地質学的検討から、河床堆積物の縞構造は年層である可能性を示唆する結果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の目標であった、河川水の化学成分の分析と河床堆積物の縞の成長過程の観察から、河床堆積物の縞構造が年層である可能性を導くことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、濁川での観測を継続し、本年度得られた結果の妥当性を検証していく。さらには、同位体比の分析結果、河床堆積物の縞の微細組織の解析などを実施し、堆積物の形成過程とその中に記録される環境情報、ならびに噴火活動などのイベントに関する情報についての詳細な検討を行う。また、河岸段丘崖から発見された堆積物の年代測定と縞の解析を行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定している研究経費の使途は、施設利用費が100千円、実験器具及び試薬などの消耗品費が100千円、同位体比測定費が300千円である。
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