研究課題/領域番号 |
24700949
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
朝日 克彦 信州大学, 山岳科学総合研究所, 助教 (70602150)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 氷河 / 氷河変動 / 気候変動 / ヒマラヤ / ネパール / 国際研究者交流 |
研究概要 |
平成24年度の研究実績は以下の通りである. 1.氷河末端変動の現地観測 ネパール東部,クンブ・ヒマールにおいて,1970年代から氷河末端位置の定点測量が行われている小型氷河9ヶ所のうち6ヶ所を対象に現地での多角測量を実施し,2012年の氷河末端位置の計測を行った.6ヶ所の氷河のうち1ヶ所(ED010氷河)では氷体が完全に融解し,氷河が消滅していた.気候変動によるネパール・ヒマラヤでの氷河消滅の可能性が言及されていたが,消滅が現地で確認された最初の事例である.このほかの5ヶ所は,前回,2004年の測量と比較していずれも氷河末端位置が後退していた.2004年からの8年間での後退距離は25~57mであり,1年間の平均後退速度は3.2~7.2m/年であった.前々回,1996年から2004年までの平均後退速度と比較すると,2ヶ所の氷河はあまり変化がなく,3ヶ所の氷河は末端後退速度が鈍化した.いずれの観測点においても次回の測量に備え,測量定点の保守,位置のGPS計測を行い,過去の測量データ,写真などと併せ基点情報の収集・整理も行った. 2.融氷河水の利水状況調査 ネパール東部,クンブ・ヒマールおよびネパール中部,ランタン・ヒマールにおいて,農業的土地利用の状況,灌漑設備について現地調査した.この結果両地域とも,氷河起源の河川水は利用しておらず,引水するための灌漑設備もなかった.基本的には天水を利用している.播種前に農地を耕作する際に散水が必要な場合は支流から引水していた.クンブ・ヒマールの主河川,ドゥドゥ・コシ川において,氷河末端の源流から下流30kmまでの各地で河川水を採水し,融氷河水に含まれる縣濁物質量を測定した.重量比0.01%程度の粘土を含んでいたことから,この河川水を灌漑に用いるとトン単位の無機質クレイを散布することになる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の中心をなす2課題,1)小型氷河の氷河末端変動の現地測量観測,2)融氷河水の利水状況にかかる村落社会調査,について,予定通りに現地調査を実施できた.ネパール東部のクンブ・ヒマールにおいて,平成24年夏季に課題1)および2)について,ネパール中部のランタン・ヒマールにおいて,秋季に課題2)にかかる現地調査を実施した. 夏季の調査では,標高5600mの観測地にて降雪のため身動きが取れない事態となったが,天候の回復を待って,予定していた6ヶ所の氷河での測量,観測を実施できた.アジアの氷河では本研究の対象となっている小型氷河でのみ定点写真の撮影が行われており,これを継続することもできた.また測量の終了後,測量基点の保守,維持作業,ならびに基点位置のGPS座標計測も行え,次回,10年後の再観測への道筋をつけることができた.また,過去に行った測量のデータや写真資料の収集も行い,基点情報を含めた情報の集約,データベースの作成も順調に行っている. 課題2)融氷河水の利水状況についても,現地調査で灌漑設備の有無の確認,農業的土地利用の状況調査といった村落社会調査のほか,氷河末端から30kmまでの下流各地において,融氷河水の採水,水温,電気伝導度測定を実施した.融氷河水に含まれる縣濁物質量の測定により,重量比0.01%程度の粘土を含むことが分かった. 発展途上国の高山帯という,フィールド調査を行うのに困難を伴う地域での活動を主とする研究において,初年度としては極めて順調,かつ概ね予定通りの研究を達成した.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き当初計画通り,クンブ・ヒマールにおいて残り3ヶ所の小型氷河において氷河末端位置の測量を実施する.併せて,融氷河水の利水状況にかかる社会村落調査および水文学的調査を実施する.より降水量の多い地域で調査を行い,降水量の多寡が利水状況に変化を及ぼしているか,明らかにする.またクンブ・ヒマールについて,1964年のCORONA衛星画像の実体視判読を行い,同年の氷河末端位置の復元を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
夏季に約1ヶ月間,クンブ・ヒマールにおいて現地調査を実施する.この調査にかかる旅費に研究費の多くを執行する予定である.なおランタン・ヒマールにおける利水調査を前倒しして実施したので,この調査にかかる研究費分が次年度以降の研究費から減額になるが,全体としての研究計画は予定通り実施する.
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