本研究課題では、大阪府警が配信する街頭犯罪情報メールに含まれる住所情報をアドレスマッチングし街頭犯罪の空間データベースを構築するとともに、その時空間的変化パターンに関して近隣の人口動態性の観点から分析を行った。 具体的には、第一に地理情報システムを用いて、犯罪発生地点が時間帯別に地理的に集積するもしくは分散する傾向をカーネル密度を用いて可視化しその空間的分布を定量的に把握した。第二に、携帯電話の位置情報等からメッシュ単位での滞留人口分布を推定した「流動人口統計」を活用し、同データに対してクラスター分析を適用することで大阪市内の滞留人口プロファイルを作成した。これにより朝夕に滞留人口のピークがある地区であるのか、夜間に人口増加が認められる地区であるのかを簡潔に把握できる。ルーティン・アクティビティ理論に基づくと犯罪発生には近隣の監視性や犯罪機会がファクターであることから、滞留人口の規模やその変化は重要な情報となる。ひったくり犯罪を例に挙げると、地域ごとに傾向は異なるものの、滞留人口が最も少ない時間帯に犯罪発生頻度が高くばかりではなく、帰宅時間のように滞留人口が急速に減少するような場所及び時間帯で犯罪頻度が増加する地区があることがわかった。以上のように犯罪発生は近隣の動態的な人口変化と連動する形で増減を繰り返していることが重要な知見として得られた。本年度は特に、滞留人口の属性を詳細に把握すべくパーソントリップ調査を用いた人口推定法の構築法及び推定精度の検証を実施した。これらの研究成果は国内外の学会(日本地理学会及びIGU)で発表するとともに、国内外の地理学関連雑誌への投稿論文として研究成果をまとめた。
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