研究課題/領域番号 |
24700956
|
研究機関 | 独立行政法人放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
鶴岡 千鶴 独立行政法人放射線医学総合研究所, 放射線防護研究センター, 博士研究員 (60415411)
|
キーワード | 放射線発がん |
研究概要 |
近年、子どもが放射線診断や放射線治療の目的で頭部への被ばくをする機会が増してきている。しかし、小児期の被ばくによる発がんリスクに関する基礎データは、十分に蓄積されていないのが現状であり、さらには放射線源の違いにおける発がんリスクの基礎データはほぼ皆無である。そこで本研究では、乳児期の被ばくにより髄芽腫を高頻度に発生するPtch1遺伝子ヘテロ欠損マウスを用い、放射線源(ガンマ線もしくは中性子線)及び被ばく時年齢の違いによる髄芽腫の誘発機構がどのように異なるかを明らかにすることを目的とした。 マウスは[C3/He×C57BL/6ptch+/-]F1を自家繁殖し、飼育・照射はすべてSPF環境下で行った。被ばく時年齢は、放射線感受性の時期である胎生14日、17日、生後1日齢、4日齢及び、非照射群に比べ髄芽腫発生率が低下する10日齢、さらには非照射群の6群で行い、放射線源は中性子線及びガンマ線を用いた。照射線量は、0.1 Gy及び0.5 Gyの2線量(生後10日齢は0.5 Gyのみ)とした。照射後、健康観察は1日1回目視にて行い、健康状態の悪化が見られたマウスは解剖後病理解析を行った。また髄芽腫が発生した際には、髄芽腫組織の一部と正常組織(耳)を分子解析用に凍結保存した。 すべての実験群において髄芽腫の発生は生後100日前後より観察された。また、胎生14日~生後1日齢に被ばくした時の髄芽腫の発生率はγ線に比べ中性子線において有意に増加していたのに対し、放射線抵抗性の時期である生後4日齢もしくは10日齢では、γ線と中性子線による発生率の差は小さくなることが明らかとなった。また、発生した髄芽腫の分子解析を開始した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一昨年の中性子線加速器トラブルにより遅れていた照射実験は、昨年の計画通り平成25年7月に終了した。また、先に照射実験が終了していた実験群より髄芽腫の発生が生後400日以降には発生しないことがわかった。このことからすべての実験群において平成26年度9月までに髄芽腫の発生が終了する見込みである。すでに発生した髄芽腫の分子解析を随時行っていることから、平成26年度中に解析を終了し結果を示すことができる。これらのことから、現在までの達成度を「(2)おおむね順調に進展している」とした。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、照射後の健康観察の継続及び発生した髄芽腫の分子解析を行う。 本研究で用いているPtch1遺伝子ヘテロ欠損マウスの放射線誘発髄芽腫は、野生型Ptch1遺伝子が欠失型による喪失により発生していることが明らかになっている。この特徴を利用し、Ptch1遺伝子の前後6カ所のマイクロサテライトマーカー(D13Mit303、D13Mit91、D13Mit210、D13Mit159、D13Mit76、D13Mit35)のPCR、Ptch1遺伝子座exon23の4016に存在するT/C多形型をNested PCR法とシークエンスにより解析を行う。各実験群から発生した髄芽腫の放射線誘発型腫瘍の頻度を算出することにより、γ線・中性子線及び被ばく時年齢の違いによる生物効果の違いを明らかにする。
|
次年度の研究費の使用計画 |
予定していた消耗品及び旅費が予定価格より安価に購入できたため。 また、一昨年度遅延したマシンタイムにより腫瘍の発生時期が遅れたため、購入予定の消耗品(arry CGH)の実験をを行うことができず、次年度に行うこととなったため。 昨年度購入予定であった「arry CGH」の購入を行う。 また、平成26年度は日本宇宙生物科学会(大阪)及び日本放射線影響学会(鹿児島)と遠方の学会への旅費とする。
|