• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

ヒト小児神経芽腫の病態に類似する新たな神経芽腫マウスモデルの解析

研究課題

研究課題/領域番号 24700957
研究種目

若手研究(B)

研究機関千葉県がんセンター(研究所)

研究代表者

末永 雄介  千葉県がんセンター(研究所), がん治療開発グループ, 研究員 (80581793)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードNCYM / MYCN / p63 / Neuroblastoma / de novo gene birth / cis-antisense gene / de novo evolved protein / transgenic mouse
研究概要

がん遺伝子MYCNは神経芽腫で増幅し、過剰に発現することで発がんおよびがん進展に寄与する。神経芽腫の発がんモデルとしてMYCNトランスジェニックマウス(以下MYCN tgマウス)が用いられてきたが、このモデルは明確な遠隔転移が見られないなど、ヒト神経芽腫のMYCN増幅例と明らかに異なる病態を示す。
我々はこれまでにヒト神経芽腫において、N-CYM がMYCNと100%共に増幅し、過剰に発現することを示した。また、N-CYMはMYCNタンパク質を安定化し、神経芽腫細胞の増殖に寄与することを発見した。そこで、本研究の目的はMYCN/N-CYM double tgマウスを作出し、このマウスがヒト神経芽腫の病態に類似した新たな神経芽腫のマウスモデルとなり得るかを検証することである。
本年度は、まずMYCN tg マウスとN-CYM tgマウスを交配させることで、MYCN/N-CYM double tgマウスを作出した。生存解析としては、MYCN tg/-, N-CYM tg/- doubleマウスとN-CYM tg/-マウスを交配させ、その子80個体について遺伝子型を決定し、200日間の観察を行った。N-CYM遺伝子量により神経芽腫の発症率、発症時期には有意な差は見られなかったが、MYCN tgマウスに比べMYCN/N-CYM tgマウスでは遠隔転移の発生率が6倍に上昇した。また、それぞれの遺伝子型の腫瘍におけるMYCN発現量をWestern blotting法により定量したところ、MYCN/N-CYM tg由来の腫瘍ではMYCN tg 由来腫瘍に比べMYCN発現量が上昇していた。これらの結果は、生体内において、N-CYMがMYCNの安定化を介して神経芽腫悪性化に寄与することを示唆する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初計画していた、MYCN/ N-CYM double tgの作成および生存解析により、N-CYM遺伝子が生体内において神経芽腫悪性化に寄与することを示すことができたため。

今後の研究の推進方策

今後は、N-CYMによるMYCN安定化機構を調べることで、MYCN/NCYM double tgマウスにおける遠隔転移の上昇の分子メカニズムを明らかにすることを目的とする。
MYCNタンパク質はユビキチン-プロテアソーム系により分解される。CDK1/Cyclin B 複合体によりS62がリン酸化されたMYCNはGSK3betaにより、T58がさらにリン酸化される。T58がリン酸化されたMYCNはE3リガーゼによってポリユビキチン化され、プロテアソームによる分解を受ける。これまでの研究から我々はN-CYMがMYCNと結合し、ユビキチン-プロテアソーム系によるMYCNの分解を阻害することを示している。また、予備的な実験からN-CYMは神経芽腫の細胞内でMYCNのタンパク質安定性を制御するリン酸化酵素GSK3beta、に結合するとの結果を得ている。そこで、N-CYMがCDK1/Cyclin BおよびGSK3betaによるMYCNのリン酸化を抑制する可能性を考え、以下の実験を行う。
I. N-CYMがMYCNのリン酸化を阻害するかを調べるために、まず精製タンパク質を用いたin vitro kinase assayを行う。その後、精製N-CYM濃度やATP濃度を変化させることで、リン酸化酵素のATPポケットに結合し、ATP結合を競合的に阻害するかを調べるなど、さらに詳細にリン酸化酵素の活性を阻害する様式を決定する。N-CYMの機能がリン酸化の阻害ではないことが明らかになった場合は、E3ユビキチンリガーゼによるポリユビキチン化の阻害効果、プロテアソームによる分解の阻害効果を調べる。
II. MYCN/N-CYM double tgマウスから発生する神経芽腫組織を用い、MYCN、GSK3betaおよびCDK1/Cyclin BとN-CYMの結合を免疫沈降法で解析する。

次年度の研究費の使用計画

次年度使用額として1円が生じた。これは振り込み手数料等、翌年度以降に請求する研究費とともに使用する予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2012 その他

すべて 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)

  • [学会発表] 神経系腫瘍の増殖制御におけるTAp63とMycの機能的役割2012

    • 著者名/発表者名
      末永 雄介、 八巻 智洋、 Jennifer Alagu、 高取 敦志、 金子 伊樹、 松本 大介、 Shamim Hossain、 S. M. Rafiqul Islam、 庄子 渉、 中村 洋子、 大平 美紀、原口 清輝、 中川原 章
    • 学会等名
      第71日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      札幌
    • 年月日
      20120919-20120921
    • 招待講演
  • [学会発表] NCYM, a novel MYCN cis-antisense gene product, stabilizes MYCN and contributes to aggressiveness of human neuroblastoma2012

    • 著者名/発表者名
      末永雄介、高取敦志、金子伊樹、川名秀忠、エスエム ラフィクルイスラム、ジェニファーアラグー、モハマド シャミンホセイン、松本大介、庄子渉、伊丹真紀子、中村洋子、大平美紀、原口清輝、中川原章
    • 学会等名
      平成24年度がん若手研究者ワークショップ
    • 発表場所
      蓼科
    • 年月日
      20120905-20120907
  • [学会発表] NCYM, a novel MYCN cis-antisense gene product, stabilizes MYCN and contributes to aggressiveness of human neuroblastoma2012

    • 著者名/発表者名
      Yusuke Suenaga, Atsushi Takatori, Hidetada Kawana, Yoshiki Kaneko, Daisuke Matsumoto, Wataru Shoji, Mohammad Shamim Hossain, MikiOhira, Makiko Itami, Seiki Haraguchi, and Akira Nakagawara
    • 学会等名
      Advances in Neuroblastoma Research Conference 2012
    • 発表場所
      トロント
    • 年月日
      20120618-20120621
  • [学会発表] Functional roles of TLP-TAp63 pathway in human cancer2012

    • 著者名/発表者名
      末永雄介
    • 学会等名
      河北医科大学 訪問及び講演
    • 発表場所
      石家荘市
    • 年月日
      20120521-20120525
    • 招待講演
  • [備考] 千葉県がんセンター ホームページ

    • URL

      http://www.chiba-cc.jp/inst/jp/organization/index.html

  • [産業財産権] 神経芽腫モデルマウス2012

    • 発明者名
      中川原 章、末永 雄介
    • 権利者名
      中川原 章
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      2012-220434
    • 出願年月日
      2012-10-02

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi