研究実績の概要 |
前年度までの研究から、NCYMはMYCNを安定化し、神経芽腫の悪性化に寄与することを明らかにした(Suenaga et al., PLOS Genetics 2014、highlighted in Nat. Rev. Cancer 2014 and New York Times, April 29, 2014)。本年度はNCYMによるがん進展の機構をさらに詳細に解析した。
MYCN/NCYM Tg マウスの腫瘍を解析したところ、MYCN Tg マウスの腫瘍に比較して、アポトーシスが抑制されていることが明らかになり、アポトーシス抑制因子であるMyc-nick産生が上昇していた。さらに、In vitro cleavage assayによりNCYMが直接的にCalpain によるMYCNの切断を促進することで、Myc-nick産生が上昇することが示された。細胞周期の解析から、NCYMはMyc-nick産生をG2/M期に促進することで、微小管を安定化し、細胞死を抑制する可能性が示唆された(Shoji, Suenaga et al., Biochem.Biophys. Res. Commun. in press)。
また、神経幹細胞の維持に関わる因子であるOCT4の発現量をヒト神経芽腫で定量したところ、MYCN/NCYM増幅の神経芽腫でのみ不良な予後と相関し、NCYM発現量と強く相関した。さらに、OCT4はMYCNの転写を活性化する一方で、NCYMはMYCNの安定化を介してOCT4を転写活性化し、正のフィードバックループを形成することが示された。また、このMYCN/NCYM-OCT4 転写ネットワークは神経芽腫の非対称分裂を抑制し、幹細胞性の維持に寄与する可能性が明らかになった(Kaneko, Suenaga et al., Cancer Sci. in press)。
|