研究課題/領域番号 |
24700963
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
山内 啓子 山形大学, 医学部, 医員 (30536967)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | マクロファージ / 転写因子 / MafB / 腫瘍免疫 |
研究概要 |
マクロファージ転写因子MafBはマクロファージの分化に関与すると考えられている。その欠損マウスは致死的であるため、我々はdominant Negative(DN)MafBをスカベンジャーレセプタープロモーター(SR-P; Horvai A et al. PNAS 1995)制御下でマクロファージ特異的に発現させるマウスを作製した(MSR-DNMafBマウス)。この遺伝子改変マウスでは肺胞マクロファージ数がコントロールに比して有意に減少しており、しかもマクロファージ細胞表面分化マーカー(F4/80, CD11b)の発現が変化していることが観察された。すなわち我々の計画のとおり、マクロファージの分化に変調をきたしたマウスが得られたと考えられる。 本研究の目的は、MafB活性抑制が悪性腫瘍の発生と進展におよぼす影響の有無を検討することとした。 まず最初にMSR-DNMafBマウスで悪性腫瘍の加齢による自然発生率を観察した。MSR-DNMafBマウスとコントロールマウスを無刺激下で長期に飼育・観察したが、両群に生存率の差はなく、MafBの抑制による自然発がんの増加は観察されなかった。 つぎに、本遺伝子改変マウスにおけるマクロファージの貪食能を検討した。MSR-DNMafBマウスとコントロールマウスから肺胞マクロファージを回収し、オプソニン化された蛍光標識ビーズの貪食を評価したところ、遺伝子改変マウスにて有意にマクロファージの貪食が低下していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は初年度に、マクロファージの表面マーカーの解析を計画していたが、マウスの生産性がやや悪く、予定していた計画が遂行できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
癌細胞移植でのMafBの腫瘍免疫に果たす役割を検討するためMSR-DNMafBマウスとコントロールマウスに培養がん細胞(Lewis Lung carcinoma cellなど)を尾静脈投与し、一定期間飼育後に転移の程度を病理学的に比較評価する。さらに、両マウスにおける生存率を比較評価する研究を計画している。 また、MafBがマクロファージの表現型に影響を与えているかどうかを検討するため、 MSR-DNMafBマウスとコントロールマウスの組織中(肺、肝臓、脾臓、胸腺)のマクロファージを病理組織学的に、あるいは細胞を分離しFACSで解析することによって、これらの因子の発現量の差を比較検討する。 さらにMafB活性抑制がTAM形成へ及ぼす影響の有無を検討するため、MSR-DNMafBマウスに腫瘍を移植し、腫瘍組織内のTAMを定量評価する。方法としてはMSR-DNMafBマウスとコントロールマウスに培養がん細胞(Lewis Lung carcinoma cellなど)を尾静脈投与する。移植癌病巣と転移病巣におけるTAMの数をCD68陽性細胞数をカウントすることで比較評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は主にマウスの維持費や、抗体の購入などの消耗物品の購入費に使用される。一部は、論文投稿費やその際の論文校正費用に使用する。
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