我々はマクロファージ特異的にdominant-negative(DN)-MafBを発現する遺伝子発現マウスを作成し、①肺胞マクロファージ数の減少、②肺胞マクロファージにおける電子顕微鏡所見上マクロファージの偽足形態の変化と光学顕微鏡所見での偽足の延長不良、③腹腔マクロファージでの細胞表面マーカーの変化、④肺胞マクロファージでの貪食能の減少とRhoA活性の低下が認められることを報告した。本遺伝子改変マウスにおける腫瘍免疫機構の変化を検討するため、転移性肺腫瘍モデルによる検証を行った。12週齢のDN-MafBマウスとコントロールマウスに対し、メラノーマ細胞株(B16-F10)を尾静脈から注入し、生存を解析した。両群とも投与後20日から死亡を認め、30日から40日にかけて急速に生存率が低下し死滅した。Kaplan-Meier曲線は両群でほぼ同一の曲線を描き、log rank test P =0.74と生存率に関して有意差を認めなかった。メラノーマ腫瘍内ならびにその周辺の腫瘍関連マクロファージ数をMac3による蛍光免疫染色で検討したが、両群間で明らかな差はなかった。原因としてメラノーマ細胞の腫瘍増殖速度が速すぎるため、マクロファージによる腫瘍免疫機構が関与する間もなくマウスが死滅してしまうことが考えられたため、原発性肺癌モデルとしてのウレタンによる自然発症肺癌モデルでの検証と、GFP発現肺癌細胞株による転移性肺腫瘍モデルによる検証を試みることにした。12週齢のDN-MafBマウスとコントロールマウスに対して、マウス1gあたり1mgのウレタンを腹腔内投与し、6か月後にマウスを屠殺し、肺組織の病理組織標本を作製した。現在、ウレタン腹腔内投与による肺腫瘍の発生を確認し、その発生数、腫瘍サイズ、マクロファージ数に関して検討を進めている。またGFP発現肺癌細胞株の尾静脈投与準備を進めている。
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