研究課題/領域番号 |
24700969
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
末弘 淳一 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任研究員 (80572601)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 血管内皮細胞 / VEGF / NFATc / ChIP-seq |
研究概要 |
腫瘍環境下の内皮細胞におけるNFATcによる転写活性化機構を明らかにすることを目的とし、本年度は①ChIP-seqによる標的遺伝子の網羅的探索、②NFATc配列を含むEgr-3プロモータ依存lacZ発現マウスを用いた個体レベルでの発現解析を行った。 ① 臍帯静脈内皮細胞HUVECを用いてNFATc抗体を用いたChIP-seqを行い、VEGF刺激後1時間で4,119箇所の結合領域を同定した。ChIP-seqから得られたデータをインフォマティックス解析したところ、1) GGAAA配列にNFATcが結合すること、2) NFATc結合領域周囲にC/EBP、CREB結合配列が存在すること、3) NFATcはH3K4me3ヒストンマークと共局在していることを新たに見出した。NFATc標的遺伝子の絞り込みではChIP-seqとマイクロアレイデータを組み合わせて20遺伝子を抽出し、そのなかでCXCR7、RND1に着目して発現・機能解析を行った。プロモータ解析では、CXCR7遺伝子5’-flanking領域(-439/+89)をクローニングしてレポータアッセイを行い、この領域に存在する3か所のNFATc結合配列が誘導に必須であることを見出した。また、内皮機能解析においてVEGF-NFATcシグナルにより誘導されたCXCR7は、特異的リガンドであるSDF-1を介した細胞遊走、血管新生を増強することを明らかにした。さらに、もう一つの標的遺伝子であるRhoGTPase RND1について機能解析を行い、RhoAを介した内皮バリア機能制御に関わることを明らかにした。 ② Egr-3プロモータ依存lacZ発現マウスの胎生期においてE10.5以前にプロモータ活性がほぼ見られず、E15以降の血管においてシグナルが確認された。成体においても同様に血管で強い活性が見られ、特に脳、心臓、皮膚において顕著であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に予定していた「HUVECを用いたChIP-seq法によるNFATc結合領域の網羅的探索」、「マイクロアレイによるNFATcを介した発現解析」、及び「これらデータを組み合わせたNFATc新規標的遺伝子の探索」について、順調に終えることができた。NFATc標的遺伝子については20遺伝子を同定し、うちケモカイン受容体CXCR7、RhoGTPaseであるRND1について解析を行った。CXCR7についてはSDF-1、VEGF共刺激下の細胞遊走に関わること、RND1についてはRhoAを介した細胞バリア機能に寄与していることを明らかにした。以上は、VEGF-NFATcシグナリングが内皮機能において中心的役割を果たすことを示唆しており、新たな創薬ターゲットを見出していく上での重要な成果である。 「NFATc結合配列を含むEgr-3プロモータ依存lacZ発現マウス」については各種組織でのプロモータ活性を確認でき、当初の予定を遂行することができた。生理的条件において、胎生から成体までの経時的変化を捉え、Egr-3の発現が空間的、時間的にダイナミックに調節されていることが明らかになった。今後の課題として、NFATc活性化と疾患との関わりを明確にしていくため、病的環境下でEgr-3プロモータ活性がどのように変化するかを各種組織で詳細に解析することが挙げられる。 NFATc抗体を用いたプロテオミクスについて、予備的検討として内在性タンパクの免疫沈降を行い、ウェスタンブロッティングによる検出に成功した。一方、タンパク質の収量の問題により質量分析装置を用いたタンパク質複合体解析、リン酸化修飾解析には至らなかった。今後は現状を打開すべく、スケールアップして内在性タンパクの検出を行う一方、現在使用している抗体に依存しない実験系でバックアップとして検討を進めていく必要が出てきた。
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今後の研究の推進方策 |
NFATc結合配列を組み込んだlacZ発現トランスジェニックマウスについては各種組織における血管で活性が確認できたことから、病的環境下(炎症刺激や固形腫瘍モデル)で活性の検討を行う予定である。NFATc抗体を用いたプロテオミクスについては予備実験にて内在性タンパクの免疫沈降に成功していたが、タンパク質の収量の問題により質量分析装置による複合体同定には至らなかった。次年度は、1)タンパク質の量をスケールアップし内在性タンパク質のプロテオミクス解析を行うこと、2) FLAG融合NFATc発現系を立ち上げ、強制発現タンパクを用いたプロテオミクス解析を行うこと、3) yeast two hybridシステムによりNFATcと相互作用するタンパク質を絞り込むこと、を並行して進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
相対的に進捗度が低いNFATcのプロテオミクスについて注力していきたい。 質量分析装置によるプロテオミクスにおいては、免疫沈降条件をさらにブラッシュアップしていくことが必要である。また、当初の計画では免疫沈降に使用する抗体の性質に依存する部分が大きいため、代替案としてFLAG融合NFATc強制発現系を確立し、FLAG M2抗体にて複合体要素を絞り込む作業を行う。さらに、yeast two hybridシステムを立ちあげ、NFATcを含むタンパク質複合体の構成要素を検討していく。以上のアッセイを立ち上げるため、前年度からの繰越金を活用し改善を図っていく。
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