研究概要 |
我々は、骨髄異形成症候群(MDS) に特異的かつ高頻度に認められる原因遺伝子変異として「スプライシングパスウェイ変異」を報告した(Yoshida et.al. Nature, 2011)。本研究の目的は、これらの遺伝子変異により惹起されるスプライシング異常を網羅的に観察、解析することで、MDS発症の分子メカニズムを明らかにすることである。 これまでに、MDS で高頻度に異常が確認されたスプライシング関連遺伝子(U2AF35,SRSF2)について、変異体を導入した細胞株の全メッセンジャーRNA の高速シーケンス解析を行った。さらに、MDS患者検体を用いて、全メッセンジャーRNAの解析を行い、スプライシング因子の変異によりスプライシング異常が生じる共通の遺伝子を検出した。異常の検出においては、共同研究により開発されたgenomon-fusion パイプライン及び、今回新たに構築した異常検出、スプライシング異常分類パイプラインを用いた。 最終年度である今年度は、前年度に引き続きMDS患者検体のシーケンスを行い、網羅的にスプライシング異常を検出した上で、スプライシング因子に変異がある症例と、変異を有しない症例とを比較し、共通にスプライシング異常を生じる遺伝子の検出・解析を行った。患者検体を用いた解析においても、当初の予想より広範に検体間で共通のスプライシング異常が認められており、現段階ではMDS病態との直接のつながりのある遺伝子発現異常、パスウェイを同定するに至っていない。今回検討に用いたMDS検体は、単一のスプライシング因子の遺伝子変異を有する検体であるが、他のスプライシング因子の変異を持つ検体を今後解析することにより、共通の異常、差が顕著に観察される異常を割り出し、MDS病態を説明することを目標とした解析を継続する予定である。
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