T199リン酸化NPM(ヌクレオフォスミン)の標的エキソンを探索するため、NPM依存的な選択的スプライシングを細胞内で人為的に誘導する必要がある。平成24年度、T199リン酸化NPMを模倣する活性化型NPM(T199D-NPM)とその不活性型NPM(T199A-NPM)の発現ベクターを調製した。これらをHEK293細胞に導入して過剰発現を行いtotal RNAを抽出した。そして、細胞内で発生したスプライシングの変化をエキソンアレイにより解析した。平成25年度、エキソンアレイ解析を元に生物情報解析を行い、NPM依存的に細胞膜関連遺伝子群の発現変化が示唆される結果を得た。選択的スプライシングでは、標的エキソン候補群から無作為にRT-PCRによる検証を行なった。しかし、変化が認められる選択的エキソンは少数であった。 そのため平成26年度は、T199D-NPMとT199A-NPMの比較において、顕著なスプライシングが期待できる標的エキソンを同定する事とした。特に、アレイ解析の生物学的duplicateで矛盾しないスプライシングを示唆する事、既知の選択的エキソンである事を確認し、平均値として大きなSI値(スプライシングインデック)を示した選択的エキソンから順次RT-PCRによる検証を行なった。その結果、SI値が5以上を示す選択的エキソン群では、約半数のエキソンで変化が確認された。その後、プライマー設計が容易なSI値1.6までの候補エキソンを検証したが、急激に擬陽性率が増大した。最も顕著な変化は、白血病関連の転写因子で検出され、活性化型NPMによりC末側を欠失したアイソフォームの増大が示唆された。選択的スプライシングにおけるNPMを検証する上で興味深い標的エキソンが得られたといえる。
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