研究課題/領域番号 |
24700979
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
品川 慶 広島大学, 大学病院, 病院(医) 医科診療医 (50623609)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 間葉系幹細胞 / 大腸癌 / メタロチオネイン / フィブロネクチン |
研究概要 |
これまで我々は、骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)が腫瘍間質形成に寄与し、大腸癌の増殖や転移を促進することを明らかにした。また最近、大腸癌細胞株KM12SMをMSCと「非接触性」に共培養した際に、癌細胞におけるメタロチオネイン(MT)の発現が著明に上昇することをcDNAマイクロアレイ法にて明らかにした。MSCと「非接触性」に共培養したKM12SM細胞からmRNAを抽出し、定量的PCR(real-time PCR)を行ったところ、MTの発現はマイクロアレイ法の結果と同様に上昇していた。また、ヌードマウスの盲腸壁に大腸癌細胞とMSCを混ぜたものを同所移植し、形成された腫瘍組織の定量的PCRを行った際も同様の結果が得られた。 次に、大腸癌症例のパラフィン切片を用い癌細胞と間質細胞におけるMTの発現を免疫組織学的に検討した。ヒト大腸癌組織において病期の進行とともにMTの発現が減少していたが、癌の先進部や間質と接している癌胞巣においてMTの発現は上昇していた。この現象は、癌間質へ動員された骨髄MSCによって癌のMT発現が上昇することを示唆している。 次に、大腸癌細胞におけるMT発現をshRNAを用いて抑制し、MT発現の抑制が癌の増殖や転移に与える影響、ないしMSCの腫瘍増殖促進作に与える影響を検証しようと考えたが、MT発現のみを特異的に抑制するshRNA作製は困難であった(MTとは異なる別の遺伝子発現にも影響するような配列しか作製できなかった)。 そのため、当初平成25年度に行う予定であった実施計画を前倒しで遂行した。大腸癌細胞をMSCと「接触性」に共培養した際に癌で特異的に上昇する遺伝子を、cDNAマイクロアレイ法を用いて検討したところ、フィブロネクチンの発現が著明に上昇していた。今後は癌におけるフィブロネクチン発現が癌の増殖・転移にどのように関与しているのかを検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究実施計画別の達成率は以下のとおりである。 1.ヒト大腸癌において腫瘍細胞と間質細胞におけるMT発現の意義を明らかにする。 ヒト大腸癌症例のパラフィン切片を用い、癌細胞におけるMTの発現を免疫染色で検証し、癌の病期やの関連を明らかにできた。腫瘍間質におけるMT高発現細胞を認めたが、間質マーカーであるaSMAやコラーゲンI、上皮マーカーであるサイトケラチンやEカドヘリンの蛍光二重免疫染色での検討でも細胞の起源ははっきりしなかった。今後も検討を続けていく予定である。 2.ヌードマウス同所性大腸癌モデルにおいて腫瘍-間質ないし腫瘍-MSC相互作用におけるMT発現の意義を明らかにする。 ヌードマウス同所性大腸癌モデルを用い、癌細胞とMSCを混合移植して形成された同所性大腸腫瘍においてMT発現が上昇していた。大腸癌細胞におけるMT発現をshRNAを用いて抑制し、MT発現の抑制が癌の増殖や転移に与える影響、ないしMSCの腫瘍増殖促進作に与える影響を検証しようと考えたが、MT発現のみを特異的に抑制するshRNA作製は困難であった(MTとは異なる別の遺伝子発現にも影響するような配列しか作製できなかった)。 そのため、当初平成25年度に行う予定であった実施計画を前倒しで行うこととし、大腸癌細胞をMSCと「接触性」に共培養した際に癌で特異的に上昇する遺伝子を、cDNAマイクロアレイ法を用いて同定できた。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト大腸癌症例のパラフィン切片において腫瘍間質におけるMT高発現細胞を認めたが、その細胞起源について蛍光二重免疫染色を継続し今後も検討を続ける予定である。また大腸癌細胞をMSCと「接触性」に共培養した際に癌で特異的に上昇する遺伝子を、cDNAマイクロアレイ法を用いて検討したところ、フィブロネクチンの発現が著明に上昇していた。今後は癌におけるフィブロネクチン発現が癌の増殖・転移にどのように関与しているのかをヒト大腸癌パラフィン切片、ヌードマウスヒト大腸癌同所移植標本を用いて検討する予定である。また、MSCの接触の有無による癌細胞における変化の違いについて明らかにしていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
免疫染色やウエスタンブロット、PCRなどに用いる試薬・消耗品のほか、ヌードマウスを用いた動物実験にかかる備品などを次年度の研究費で購入する予定である。
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