研究課題
悪性リンパ腫のなかでもT細胞性リンパ腫は依然として予後不良であり、なかでも血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)は、その複雑な病像もあり病態の解明、治療の改善が待たれている。申請者は、抗CCR4抗体の臨床開発を通じてT細胞性リンパ腫の病態・治療について研究を行ってきた。その研究のなかで申請者は免疫不全マウスであるNOGマウスにAITLの新鮮患者検体を移植したAITLモデルマウスを樹立した。このモデルはヒトAITL の多彩な病像を非常によく反映していた。治療法の改善には病態の解明が不可欠である。本研究は、AITLのがん幹細胞を探索し、病態を解明することにより、その病態に沿った有効な治療法の開発につなげることを目的とした。さらに新たなAITL患者の検体も用いてNOGマウスモデルを作成し、再現できた腫瘍組織の解析を行い、そこから長期間にわたる造腫瘍能の高いAITL腫瘍細胞集団の同定、単離する予定としていた。以前に樹立したモデルとはまた別の患者由来のAITL新鮮腫瘍細胞をNOGマウスに移植した。以前のモデルや新たなモデルマウスの各臓器由来の腫瘍を打ち分けたモデルを作成し、造腫瘍能の高いAITL腫瘍細胞集団を同定、単離して、造腫瘍能の高くないAITL腫瘍細胞集団との遺伝子的な相違について、比較・解析する予定であったが、継代移植をする過程でAITLの腫瘍細胞と共に再現されたガンマグロブリン産生やBリンパ球・形質細胞の増殖は観察できなくなり、腫瘍細胞のみが増殖してくることがわかった。すなわちAITLの多彩な病像を観察できるのは最初に移植した初代のモデルマウスでのみということが明らかになった。継代移植をする過程で、より生着する力の強い腫瘍細胞本体のみが生き残り、それ以外のパートは失われていくものと考えられた。
すべて 2013
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Leukemia Research
巻: 37 ページ: 21-27
10.1016/j.leukres.2012.09.009