TRB3はさまざまなストレスに応答して誘導される分子として同定され、細胞のがん化に関与すると考えられているが、その詳細は不明である。本研究では、TRB3がp53を抑制する分子メカニズムを明らかにし、TRB3による細胞がん化への作用を理解することを目的としている。本年度の研究において以下の結果を得た。 (1)DNAダメージチェックポイントにおけるTRB3発現低下機構の解析。DNAダメージを与えるとTRB3発現レベルが減少し、それはタンパクレベルでの発現低下によるものであった。DNAダメージによりサイクリンD1はCdh1-APC複合体により分解を受けることが報告されているが、TRB3もサイクリンD1同様、Cdh1-APC複合体によりユビキチン化され分解されることが分かった。この結果から、DNAダメージによりTRB3が低下し、TRB3による抑制から解除されたp53が活性化するというモデルが考えられた。(2)前年度の解析で、小胞体ストレス時にCDKインヒビターp21が誘導され細胞周期停止が起こることを明らかにしていたが、p21はATF4により誘導されること、またTRB3はATF4を抑制することで細胞周期チェックポイントから逸脱させていることを明らかにした。(3)TRB3とp53との詳細な結合領域を同定から、両者の結合をハイスループットでモニター可能な実験系を構築し、TRB3とp53の結合を阻害する化合物スクリーニングに着手した。
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