研究概要 |
本研究は、癌分子標的薬剤の新規ターゲット因子の策定により、癌不死化規定因子として同定されたTRA2B (transformer 2 beta homolog, Drosophila)の機能解析を目的としている。 昨年度までの研究成果により、TRA2Bが癌細胞の生死を規定する重要な因子であることが示唆された。すなわち、癌細胞を用いたTRA2Bノックダウン実験における遺伝子発現解析とネットワーク解析によって、TRA2Bが細胞周期チェックポイントの制御因子であるMAD2L1や細胞増殖を制御するLATS2などの遺伝子発現を調節し、さまざまな細胞内パスウェイに関与していることが示された。しかしながら、TRA2Bがどのようにして、これらの遺伝子発現調節を介したパスウェイ制御を行っているかについては未だ明らかとはなっていない。 最終年度では、癌細胞の増殖や細胞周期制御機構において、TRA2Bが選択的スプライシングを制御する因子であることに着目し、TRA2Bによって産出されるがん特異的なスプライシングバリアントの関与について検討した。具体的には、エキソンアレイおよび高機能シークエンサーを用いて、TRA2Bによってスプライシング制御される癌関連遺伝子について、がん特異的なバリアントの策定を試みた。その結果、すでに癌との関連が示されているCD44を含め、19の癌関連遺伝子において新規バリアント候補を検出することができた。なお、策定したバリアントに関しては、配列解析やクローニングによって癌細胞不死化に関わる機能についてさらに検証を進める予定である。
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