本研究ではグリオブラストーマ(GBM)における腫瘍形成規定因子の探索及びGBM起源細胞の特性の解析を行った。 前年度ではInk4a/Arf -/-、H-RasV12過剰発現のGBM起源細胞を複数樹立して、その特性を解析した結果、エネルギー代謝が異なる起源細胞が存在することを見出した。具体的に、メタボローム解析、代謝関連酵素の発現確認によって、生存・増殖に必要なエネルギーを主に好気的解糖系代謝から産出する起源細胞と解糖系代謝の利用が少ない起源細胞が存在することを証明した。 本年度では解糖系代謝の利用が少ない起源細胞に注目をし、代謝経路をさらに解析した。細胞外フラックスアナライザーを用いた代謝経路・産物のプロファイリングにより、そのような起源細胞は主に酸化的リン酸化を利用することを見出した。さらに、そのような起源細胞が解糖系代謝を利用する起源細胞と比較して高いミトコンドリア予備能を有することを明らかにした。 また、本年度は上記の結果の生物学的な意義を腫瘍組織レベルで検証した。まず、腫瘍形成能について調べたところ、代謝が異なる起源細胞が同じ効率で腫瘍を形成することがわかった。しかし、代謝関連酵素の発現など、起源細胞の代謝特性は腫瘍組織内及び腫瘍幹細胞でも保たれていることが明らかになり、現行の治療に対する反応性が異なる可能性が示唆された。また、腫瘍起源・幹細胞の代謝特性そのものが新しい治療の標的となりうることも考えられた。
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