本年度はC1Dタンパク質の恒常性維持機構について調べるため、DNA損傷刺激として紫外線(UV)に加えて、慢性骨髄性白血病の病因遺伝子産物であるP210BCR-ABLチロシンキナーゼのC1D動態への影響について検討するとともに、C1Dと基本転写因子TFIIHの構成因子とのクロマチンにおける相互作用やIL-8転写に及ぼす影響についても検討した。HeLa細胞にP210BCR-ABL-Flagを発現させるとUV照射の場合と同様にIL-8 mRNA発現が亢進した。P210BCR-ABLによるC1Dのヌクレオソーム動態に及ぼす影響について調べるため、P210BCR-ABL発現Rat-1細胞にプロテアソーム阻害剤であるMG132の処理を行ったところ、ヌクレオソームにおけるC1D量の増加が認められた。P210BCR-ABL発現Rat-1細胞にE3リガーゼCHIPのsiRNAを導入しCHIPのノックダウンを行ったところ、ヌクレオソームにおけるC1D量は対照と同程度であり、UVによるヌクレオソームのC1Dの分解機構とは異なることが示唆された。クロマチン免疫沈降(ChIP)を行い、C1DとTFIIHの構成因子であるXPBやCdk7との相互作用を検討したところ、XPBに結合したC1DはUV照射後1時間で一過性に亢進すること、Cdk7に結合したC1DはUV照射後6時間まで経時的に増加することが明らかとなった。また、ChIP-qPCRによりIL-8プロモーター領域へのC1Dのリクルートを検討したところ、UV照射後15分、1時間、8時間においてC1DのIL-8プロモーター領域への結合が増加していた。これら結果より、C1Dはヌクレオソームに結合して存在し、通常はIL-8の転写を抑制しているが、UVなどのDNA損傷刺激を受けるとCHIPを介してユビキチン・プロテアソーム系により速やかに分解され、IL-8の転写が亢進することが示唆された。
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