研究課題
これまでに我々はsingle cell由来のTh細胞クローンから分離した幹細胞様メモリーT細胞とエフェクターT細胞の遺伝子発現の差をマイクロアレイとリアルタイムPCRを用いて網羅的に解析した結果、幹細胞様の機能を有するメモリーT細胞で特異的に発現する8種類の遺伝子をマスター遺伝子の候補として同定した。昨年度までに、この8種類の候補遺伝子のうちの遺伝子#1(仮名)がメモリーT細胞の機能的細胞表面マーカーであるCD62LやCD127の発現、および抗アポトーシスに働く重要なタンパク質であるBcl-2の発現に関与することが明らかとなった。さらに我々は、メモリーT細胞ではなくエフェクターT細胞で特異的に高発現する遺伝子#10を同定した。このエフェクターT細胞で高発現する遺伝子により制御されるシグナルカスケードを合成化合物の添加により調節することで、T細胞の分化を制御できる可能性を見出した。つまり、そのシグナルカスケードを促進させるとエフェクターT細胞への分化が促進し、逆に阻害剤の添加によりメモリーT細胞への分化が促進した。さらに我々は、同定した遺伝子#1および遺伝子#10のT細胞における機能を詳細に解析するために、遺伝子#1および遺伝子#10をT細胞で特異的に欠損するコンディショナルノックアウトを作製し解析した。
2: おおむね順調に進展している
24年度の目標であった遺伝子#1および遺伝子#10をT細胞で欠損するコンディショナルノックアウトマウスを作製し解析を始めることが出来た。さらに、遺伝子#1および遺伝子#10について、それぞれのプロモーターによって発現が制御されるようにレポーター遺伝子としてLacZが挿入されているノックインマウスを作製することが出来た。
24年度に引き続き、遺伝子#1および遺伝子#10コンディショナルノックアウトマウスの解析を行う。また、それぞれのコンディショナルノックアウトマウスにおけるT細胞の活性化やメモリーT細胞形成等の機能を詳細に解析するために、OVAタンパクを発現する組換えListeria monocytogenes (LM-OVA)を感染させOVA特異的T細胞の表現型・機能・動態を調査する。さらに、これらの解析結果をより明確にするために、OT-I Rag1-KOもしくはOT-II Rag1-KOバックグラウンドで、それぞれのコンディショナルノックアウトマウスを作製し感染実験を行う。また、ノックインマウスを用いることでLM-OVA感染下における遺伝子#1および遺伝子#10のT細胞による発現を時空間的に解析する。
該当なし
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