研究概要 |
当初, 当研究室で作製された抗Hsp90モノクローナル抗体が樹状細胞様細胞株DC2.4の細胞膜表面を染色することから, 樹状細胞膜表面にはHsp90が存在するとしてその生理的存在意義, またHsp90を含む細胞膜上の複合体の解析を試みた. しかしその後の解析により, DC2.4にはFcγRI (CD64) が強発現していることが判明し, 解析に使用してきた抗Hsp90モノクローナル抗体6H8のサブクラスがIgG2aであったため, 6H8はHsp90への結合以外にFcRを介して結合していることが強く示唆された. サブクラスがIgG1である別の抗Hsp90抗体 (5H12) を用いて再度解析を行ったところ, それでもなおDC2.4は染色されたがその蛍光強度は弱く, 膜表面にHsp90は存在するものの微量であることが確認された. また, より生理的条件に近い樹状細胞としてマウス骨髄由来樹状細胞を染色したところ, やはり非常に弱いが細胞膜表面でのHsp90の発現は認められた. 膜表面Hsp90を免疫沈降, 会合しているタンパクを質量分析とウェスタンブロットを用いて解析したところ, この複合体には少なくともHsp90/Hop/Hsc70/FcRγが含まれていることが判明した. shRNAを用いてFcRγをノックダウンしたところ, 膜表面Hsp90の発現が低下した. このことから, 膜表面Hsp90の発現にはFcRγが必須であることが明らかとなった. 更なる実験計画の遂行のためにはよりアフィニティーが高く解析に使用しやすい抗体の作製が必要であった. CDRが6H8と同一でサブクラスがIgG1である抗体 (6H8-IgG1) について, 遺伝子組換えによって作製を試みたが, 期間中に6H8-IgG1を高効率で産生する細胞の取得には至らなかった.
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