研究課題
原発性脳腫瘍の臨床において、手術を行わずに非侵襲的な方法で腫瘍の性質を明らかにする画像診断の果たす役割は大きい。本研究では、MRI等の既存の診断法に加えて、低酸素イメージング製剤F-18 fluoromisonidazole(FMISO)を用いたポジトロン断層撮影法(PET)を用いることで、神経膠腫の非侵襲的な鑑別診断法の確立を目指すことを目的とした。神経膠腫23症例に対して、FMISOPETを行い、その画像所見を術後病理所見と比較した。23例中14例が病理学的にWHO grade IVの神経膠芽腫であったが、これらはすべてFMISO集積亢進を示した。また残りの9例はgrade IIまたはIIIの神経膠腫であったが、これらはすべてFMISO集積陰性であった。この結果からFMISO PETによってgrade IVか、grade III以下かを鑑別することができると考えられた。さらに、神経膠芽腫のうち10例に、高分解能半導体PETでのFMISO PETおよび糖代謝を反映するFDG PETを行った。半導体PETの高い空間分解能を利用して腫瘍内の局所的な集積強弱を評価することによって、腫瘍内の分布のFMISOとFDGの分布がよく一致する症例(N=4)と、乖離する症例(N=6)が存在することを見出した。前者は嫌気性糖代謝が中心で、後者は好気性糖代謝が中心と考えられ、神経膠芽腫の中にも好気性のものと嫌気性のものが存在することがわかった。両者の治療反応性や予後の差異について今後研究を進める予定である。また、本研究に関連して、脳腫瘍の診断に用いられるメチオニンPETが、非腫瘍性の脳炎の診断にも有用であることを見出したので、これを報告した。
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Acta Radiologica
巻: 電子版
10.1258/ar.2012.120382