我々がこれまで開発してきたTP53 signatureは予後の予測性が高く、臨床的有用性が高いと考える。本研究の目的は、①Intrinsic subtypeとTP53 signatureの関連性についての検証、②TP53 signatureの臨床応用へ向けての簡便な診断法の開発、③TP53 signatureの臨床的有用性の後ろ向き観察研究による検証、の3点より、TP53 signatureの臨床的有用性に関するエビデンスの構築と臨床応用を目指すことである。 公共のデータベース上に公開されている乳がんコホート508例のデータを用いて、TP53 sigunatureとIntrinsic subtypeの関連性を検討した結果、Basal likeおよびHER2 enrich subtypeの症例の大多数はTP53変異型例であり、Luminal Aではほとんどの症例が野生型、Luminal Bでは約半数が変異型であった。また、TP53 signatureによって変異型と予測された症例では術前化学療法によって有意にpCR率が高いことが示された。またこれまでの予後因子で中間型となるGrade2の症例の予後を分けることが可能であった。 臨床応用へ向けて、FFPE組織由来のRNAを利用した診断用multiplex RT-PCR法を開発した。マイクロアレイの発現データと比較した結果、良好な相関性が確認され、TP53ステータスを診断することが可能であった。新規に88例のStageI-IIの早期乳がんコホートで検討した結果、変異型群で有意に無再発生存期間が短いことが確認された。これにより臨床応用可能な簡便な診断法が確立できたものと考える。
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