我々はヒト大腸癌および肝癌組織に関して、独自に設計したカスタムマイクロアレイを用いて 4万種類を超える遺伝子の発現を測定し、個別のアンチセンスRNAが癌の発生・進行に特異的に増加又は減少していることを確認した。 本研究では大腸癌・膵癌患者および健常人の末梢血中のRNAを抽出して独自に作製した網羅的解析を行い、最終的には早期発見が困難な消化器癌の層別化ならびにテーラーメード治療のマーカーとすることを目的とした。 これまでに、大腸癌患者28例と健常者6例を対象として、末梢血中のアンチセンスRNA の網羅的解析を行った。大腸癌患者の血液中で健常人と変化しているアンチセンスRNAを20種同定した。これらのRNAは大腸癌患者と健常人を明確に区別することが可能であった。末梢血液中のアンチセンスRNAの測定が大腸癌の診断に有用である可能性が示唆された。(論文投稿準備中) さらに、近年miRNAを中心に、エクソソーム由来分泌型non-coding RNAはさまざまな癌種のバイオマーカーとして注目を集めている。そこで我々は末梢血中エクソソームのmiRNAの解析を行った。これまでに、大腸癌患者10例と膵癌患者10例と健常人4例を対象として、エクソソーム内miRNAの網羅的解析を行った。大腸癌患者、膵癌患者の血中エクソソーム内で健常人と比較して、発現が変化しているmiRNAをそれぞれ大腸癌15種、膵癌17種同定した。クラスター解析を行うと、これらのエクソソーム内miRNAは大腸癌患者と健常人を明確に区別することが可能であった。末梢血液中エクソソーム内miRNAの測定が大腸癌の診断に有用である可能性が示唆された。膵癌に関しては明確に区別することができなかった。 アンチセンスRNAおよびエクソソーム内miRNAは末梢血を用いた大腸癌・膵癌の新規バイオマーカーとなる可能性が期待される。
|